待降節


「六道くん。手、出してもらえるかな?」
 何とはなしに、りんねは言われるままにした。
 ひょっとして手相でも見るつもりだろうか。一瞬そんなことを思って首をかしげるが、すぐに顔が熱くなった。差し出した手に、両手で包み込むようにして触れられたのだ。心の準備ができていなかったので、つい声が上擦ってしまった。
「ええっと……何かな?」
「あ、いきなりごめんね。ちょっと、触ってみたくて」
 桜は真剣に彼の手を観察している。自分の手をかさねて、大きさを比べてみたりもする。彼女が顔色も変えずにいるのだから、変に意識することでもないはずなのだが、りんねの方は気にかかって落ち着かない。
 ──大した理由もなく、他人の手に触りたくなるものなのか?
「男の子の手って、大きいね」
「そうかな……」
 内心の動揺を悟られないように、りんねは関心のないふりを装う。骨ばって節くれ立った自分の手と比べると、彼女の手がとても小さく華奢に見えることにはとうに気づいていたが、あまり意識するとついその手を握り締めてしまいたくなりそうだ。
「うちのパパの手を参考にしてもよかったけど、やっぱり確かめておいたほうがいいと思って」
「手の大きさが、何かの参考になるのか?」
「うん。もう少し後になってからの、お楽しみ」
 りんねが聞きたそうにうずうずするのを、桜は可愛らしい笑顔でかわした。
「クリスマスが待ち遠しいね、六道くん」



2017.12.12

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