「それでね、双子ちゃん達がね……」
 歩調をあわせて帰路をたどっていく。由無し事を語るかごめの横顔を、あざあざと浮き立たす空火照り。初夏の昏れが大地のすみずみまで染み渡っていく。
 近頃の彼は、急ぐということをしなくなって久しい。どこかを目指して疾走するより、二人で当て所なく散歩がしたかった。ゆるやかに流れる時をただ漫然と過ごしていたかった。
 かごめに添うまでは、考えもしなかったことだった。
「──あのくらいの歳の子って、なんでも大人の真似しようとするのよね。もう、かわいくって」
 ちらほらと野辺に咲く鴨跖草つきくさは、朝日を待ちわびながらこうべを垂れている。しゃがんでその青い花を撫でるかごめの指先が、しっとりと露をふくんだ。
 犬夜叉はその指に自分の指をからめ、しかと握りしめながら、ふたたび道なき道をゆく。
「あいつら、茜色に染めた着物が着たいんだと。かごめと揃いにしたいんだろうな」
「なら、犬夜叉ともお揃いね」
 かごめが嬉しそうに笑いながら彼の腕に抱きついてきた。
「あの子達、犬夜叉のことが大好きなのよ。知ってた? 私と同じ」
「だったら、おれもあいつらと同じってか」
 心くすぐられた犬夜叉はおもむろに首をかしげ、かごめに顔を近づけた。言葉を発しかけてかすかに開いたままの柔らかな唇に、自分の唇を押し当てる。かごめが仰け反らないよう、後ろ頭に手を添えて心ゆくまで味わい尽くす。
 ひと呼吸置いて、目のさやをすぼめながら彼は笑う。
「──ま、さすがにこれは真似できねえだろうがな」
 ばか、できるわけないじゃない、とその胸をたたくかごめのつらう頬に、犬夜叉は指をすべらせた。



19.05.23

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