夜を籠めて

 "夜"は、かごめの傍らにのみある。
 彼女がその心地良い頭の重みを彼の腕枕へあずけている間だけ、犬夜叉は暗れふさがる夜の帳の奥に、安心してその身を横たえることができるのである。
 だからかごめが目を覚まし、彼の腕の中から、そして二人にかぶせかけた火鼠の衣の中から去っていく瞬間から、──またひとつ、しらしらと夜は明けていく。
「……起こしちゃった?」
 見つめる視線に気づいたかごめが身じたくをしながら、ちらと振り返って笑う。
「まだ早いよ。寝てればいいのに」
「もう眠くねえ」
「ついさっきまで、ぐっすりだったのに?」
 おまえがいないと眠れないんだとぼやくのは、幼子のむずかりのようで憚られた。
 犬夜叉は板敷きにかすかに残るかごめの温もりに手を添えていたが、本物が恋しくなり、上体を起こして後ろから抱き竦めてみる。
「犬夜叉、もしかして寝ぼけてる?」
 くすぐったそうに身をよじらせるかごめ。ますます離しがたくなり、犬夜叉は愛情をこめて彼女の耳を甘噛みする。腕の中でかごめの体が若鮎のようにはねた。信じられないという顔つきで彼を振り返る。
「……今、噛んだ? 噛んだわよね?」
 噛みつくことは獣たるものの本能である。調子づいた彼は今度はかごめの身八つ口から手を差し入れてみた。昨夜の交歓の名残を求めるようにまろい肌をまさぐる。またもかごめはいじらしく反応する。──だが今度ばかりはやられたままではいない。
「いつまで寝ぼけてるつもり?」
 振り向きざま、のしかかるようにして犬夜叉を押し倒した。不意をつかれた犬夜叉は、気がつけばかごめを見上げる体勢になっている。すると菩薩のような顔でかごめが笑った。長い黒髪が肩口からこぼれ落ち、それを彼女は、うっすらと犬夜叉の歯型がつけられた耳にかける。
「欲しいなら、ちゃんと、そう言って」
 


19.04.25
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