列列椿つらつらつばき


  
「殺生丸さま、こっち、こっちだよ!」
 鬱蒼と生い茂る葉の向こうから、子どもの笑う声がする。見つけてほしくて、つい呼びかけずにいられなかったのだろう。こうした他愛もない戯れに、あの子どもは飽きもせず彼を巻き込もうとする。はじめは意にも介さずにいた殺生丸だったが、いつしか気が向いた時には、少しばかり付き合ってやるようになっていた。
 籬のように立ち並ぶ椿の木々の間から、今日もあの子どもが彼を呼ぶ。殺生丸は葉越しの彼女を追うようにして歩いた。それほどまでに見つけてほしくば、姿を現せばいいものを。だが彼は、それを微塵も煩わしいとは感じていなかった。
「殺生丸さま」
 木々の絶えた所から、白い顔が覗いた。あの頃から見違えるほど背丈の伸びたりんだった。もはや"子ども"ではない。雪で染め上げたような花嫁装束に、紅い唇。
「今までありがとうございました。──殺生丸さまは、ずっと、わたしの大切な人です」
 声を震わせながら、りんが抱き着いてきた。殺生丸は両の腕を尽くしてその体を受け止めた。それは一瞬にして永遠の抱擁。時を凍らせるように、はだれ雪が降りかかる。



19.04.20
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