花の下


 いっそ一思いに呼んでしまえばいい。心ではそう息巻いているのだが、いざ隣に立つと情けないほど躊躇してしまう。
「さ……さく、──昨夜は何をしていたんだ?」
 りんねはまたも自分自身を呪った。度重なる失敗にいい加減気が挫けそうになる。そんな彼の葛藤に気づいているのやらいないのやら、当の彼女は隣で暢気に彼がおごったソフトクリームを舐めている。振り向かせたい、だが──これがなかなか難しい。
「ごはん食べて、お風呂に入って、宿題して、寝たよ」
「そうか……」
「あと、それからね──りんねくんの夢を見たよ」
 ──え、とりんねは大いに目を見開いた。失意のあまりうっかり聞き流しかけたが、今、初めて、下の名を呼ばれたような気がする。
「今日、こうやって二人でデートする夢。正夢だったね、りんねくん」
 少しこそばゆそうな、けれど晴れ晴れとした様子で、桜が笑いかけてきた。暖かさでソフトクリームがふにゃりとひしげたような顔をして、りんねも、笑い返してみた。



19.04.20
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