清し女すがしめ


 真の巫女とは、いかなるものか。
 巫女として担ぎ上げられた多くの凡庸な女達が、その人生をかけて追求しつづけるであろう真理を、──巫女の中の巫女、生まれながら神霊の道へ通ずる特別な力を与えられた娘は、まるで息をするかのような自然さで理解していた。
「咳がでるときは、オオバコを煎じて飲むといい。歯が痛いときには、オナモミの汁でうがいをして、ドクダミは……」
 かごめは覚えたことをそらんじながら、さらさらと筆を走らせている。蛇腹に折った小さな覚え書きには、さまざまな薬草の特徴や効能などが細かな字でびっしりと書き留められてあり、彼女の几帳面さと薬草知識への熱意がうかがい知れた。
「草の名前なんざ覚えて、役に立つのか?」
 と、はじめは懐疑的だった犬夜叉も、今ではかごめの勉学に協力する姿勢を見せている。村の界隈には自生していない薬草を外から摘んできたり、草花のにおいの特徴を教えてみたり。
「なんでそんなに一生懸命なんだ?」
 犬夜叉は何気なく尋ねてみる。
「だって、巫女は人助けをするのが仕事でしょ」
「おまえには誰にも敵わない霊力がある、どんな瘴気もはらえる。それで十分じゃねえか」
 するとかごめは笑って答えるのだった。
「風邪と虫歯は霊力じゃ治せないでしょ。──せっかく巫女になるんだから、できる限りひとりでも多くの人を楽にしてあげたいの」
 ああ、そうか、とやけに腑に落ちた。
 卓越した霊力など、大したことではない。
 人を思いやる、清らかで善良な心。それこそがまさに、かごめを巫女の中の巫女たらしめるものなのだと、犬夜叉は理解する。
「……なに?どうしたの?顔に穴が開きそう」
 惜しげもなく讃美のまなざしをそそがれ、かごめははにかんで笑う。
 若芽の萌える山峰から、いち早く春告鳥のさえずりが流れてきた。



2019.03.16
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