公園を通り過ぎると、金木犀の甘い香りが鼻をくすぐった。
「もうすっかり、秋なんだな」
そうだね、と隣で桜が頷く。
夕焼けによく映える、小さな金木犀の花。
つい先週までは、こんなに強く香らなかったはずなのに。
「六道くん。秋といえば、何が食べたい?」
「そうだな……」
味覚の秋。食べたいものならいくらでもある。
「サンマの塩焼きとか、栗ご飯とか。おじいちゃんが生きていた頃は、よく焼き芋も買ってもらったっけ。あとは、かぼちゃの天ぷらなんかも……」
ぐうう、とりんねの腹の虫が鳴る。おいしいものを思い浮かべていたら、ますます腹が減ってきた。
「私もおなか空いてきちゃった」
桜がにっこりと笑って、彼の手をとった。
「はやくうちに行こう、六道くん」
「すまんな。度々ごちそうになって」
「いいの。パパもママも歓迎してるよ。六道くんはもう、うちの家族みたいなものだから」
──家族。
りんねの頬がほんのりと染まる。
その言葉に深い意味はないはずだ。
だが、それでも──少年の心を温めるには十分だった。
「……ありがとう、真宮桜」
「どうしたの?あらたまって」
金木犀の甘い香り。
彼女の笑顔が、胸をくすぐる。
当たり前のように甘えさせてくれる、彼の想い人。
(Thanks for your claps!)
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