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 目覚まし時計の長針と短針が重なって、ぴったり十二時をさした時。図ったかのように、受話器の向こう側からふっと彼の声が消えた。
「もしもし?もしもーし?」
 何も聞こえないと思ってそう呼びかけたけれど、ふと何かの音色が聴こえてきた。耳をすませてみると、それはヴァイオリンの音色だった。丁寧にバースデーソングを奏でる、彼お手製のヴァイオリン。
「……誕生日おめでとう、雫」
 長針が零時一分をさす前にすかさず、彼がはにかむようにぼそりと言う。照れた表情がすぐ目の前に浮かぶようで、私もまた思わず頬を手で押さえていた。





end.


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