Nightingale | ナノ

Nightingale




 その日、朝起きてからずっと、ハーマイオニーはどこにいても主役だった。
「ハッピーバースデー、ハーマイオニー!」
 親友のハリーとロンからは最上級の笑顔と抱擁と、とびきりのプレゼントを貰った。談話室ではバースデーガールとして沢山の寮生達にちやほやされた。大広間や廊下ですれ違うとき、他の寮生からもおめでとうと肩を叩かれた。
「毎日が誕生日だったらいいのに!」
 ディナーの帰り道、この上ない笑顔でハーマイオニーは廊下をスキップしていた。漆黒のローブが軽やかに翻り波打つ髪は宙を躍る。寮に戻れば親友達がバースデーケーキを用意してくれているらしい。今夜は消灯ぎりぎりまでパーティーナイトだ。
 不意に、柱の影から誰かの手が伸びた。その手はうきうき気分のハーマイオニーの腕を掴んだかと思うと、あっという間に彼女を物陰へ引きずり込んでしまった。
「しーっ、静かに」
 驚いてじたばたする彼女の口を手で塞ぎ、ドラコ・マルフォイは青灰色の目をいたずらっぽくしならせた。
「マルフォイ!」
 その呼び方に、貴公子は拗ねたような顔付きになる。
「二人きりの時はファーストネーム、っていつも言ってるじゃないか」
「だ、だって」
 ハーマイオニーはそわそわと髪を撫で付けたりスカートのプリーツを気にしたりし出した。
「……いきなり現れないでよ。びっくりするじゃない」
「ごめん。でもわざとなんだ、君を驚かせたかったから」
 ドラコはにやっと笑い、背中に隠していた花束を差し出した。
「ハッピーバースデー、ハーマイオニー」
 彼女は花束を受け取り、頬を緩ませた。花束からは心を酩酊させるかのようにいい匂いがした。
 二人は寄り添って夜の散歩道を歩いた。月光がほのかに降り注いでいる。頭上の木から鳥の啼き声がこぼれ落ちている。ハーマイオニーは耳を澄ませた。
「きれいな声ね。ナイチンゲールかしら」
「ああ。僕が餌付けしてるから、僕のためにしか啼かないんだ」
 おいで、とドラコは手を差し出して口笛を吹いた。愛らしい小鳥はパタパタ羽を動かして彼の人差し指に止まった。
「今日は僕の大事な人の誕生日なんだ。彼女のために、歌声を聴かせてくれるかい?」
 その言葉を理解したかのように、ナイチンゲールはその可憐な声で歌い出した。
「ハーマイオニー。僕のものは全部、君のものだ」
 ドラコはハーマイオニーの額にキスした。頭をそっと寄せて抱擁し、彼が身体を離すと、彼女の首元には小鳥を象った9月の誕生石・サファイアのネックレスが光っていた。
「おめでとう。愛してるよ、いつまでも」
 ハーマイオニーは感極まって涙ぐみながら、彼の胸に飛び込んだ。
「……ありがとう、ドラコ」
 秘密の恋人達を祝福するように、ナイチンゲールは歌う。





end.

(2012.09.19 HAPPY BIRTHDAY HERMIONE!!)
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -