酩酊
足取りがふらふらとおぼつかない。
若手死神の寄合に気まぐれで顔を出したのが運の尽き。「死神殺し」の異名をとる酒をしこたま飲まされた。
「二日酔いに効く薬、あの世縁日で買ってきますね」
次の日の夕方になってもまだ千鳥足のりんねに、見かねた六文が霊道へ消えたのはつい先程。
入れ替わりで授業上がりの真宮桜が訪ねてきてりんねを慌てさせた。
最も今の状態を見られたくない相手。風邪だといってどうにかごまかそうとするが、
「……六道くん、酔ってる?」
隠そうとするだけ無駄だった。桜は珍しそうにりんねの顔をのぞき込んでくる。
顔が近い。
動悸がする。
熱もあるかもしれない。
「お酒、飲んだんだ?六道くんらしくない」
自分らしさとはなんだろうーー。回らない頭でりんねは考えようとする。桜の目に映る自分の姿。普段は真面目そうに見える死神。
頭ではなく、目が回る。
「ーー六道くんらしくないね」
まただ。桜はまた今のりんねを否定する。酩酊した男にいきなり壁際に追いつめられたらそれは何かしら声も上げたくなるだろう。嫌だと叫ばれて突き飛ばされないだけまだましだった。
りんねは今の自分を否定しない。どうしようもなく目の前の少女を食べたいと思う、これもまた彼自身の顔に他ならない。多分。おそらく。きっと。
「頭がおかしくなりそうだ」
頼むから。
早く帰ってきてくれ、六文。