暁のヨナ | ナノ


▼ 龍眼 【シンア+ヨナ】

 城にいた頃、茘枝の実は皇女の好物だった。
 流浪の旅人となってこのかた、そのような嗜好品は手の届かぬ贅沢でしかなくなったが、あるとき市場で手製の薬を捌いてきたユンが、みやげにと言って持ち帰ってきたことがあった。
「シンア、シンア、ちょっとこっちにきて」
 ヨナに手招きされ、リスが茘枝を頬袋いっぱいにつめこむのを見ていた青龍は無言で切り株から腰を上げる。
「シンアは茘枝のあだ名を知っている?」
 彼が首を振ると、ヨナは無邪気に笑いながら、皮を剥いたみずみずしい茘枝を差し出してきた。
「透き通るような実でしょう?これはね、『龍眼』と呼ばれるそうよ」
「……龍眼?」
「そう。まるで、シンアの『青龍の眼』みたいよね?すごく綺麗で、食べるのがもったいなくなっちゃう」
 仮面に隠れた青龍の眼が和らぐ。
「でも、食べない方が、もっともったいない」
「でも、いつまでも見ていたくなるんだもの、食べられないわ」
 ヨナは茘枝を日の光に透かしてみたりする。
 傍らで見守るシンアの口元が自然とゆるんだ。





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