愛故の暴力

どうして、という言葉を飲み込んで、その代わりになまえは涙を流した。
嗚咽交じりに泣き出すなまえに、雲水は慌てた。
どこかぶつけたのか、体調が悪いのか、そう心配そうな顔で聞く雲水は、確かに先程までなまえと一緒に笑っていた雲水の顔だった。
壁の隅にある鞄。
その鞄に入っている携帯電話は、チカチカと点滅して、ディスプレイには金剛阿含の名前。

「どうして泣いているんだ?どうした」

私に聞かれてもわからない。
ただ何か悲しくて、涙が出てくる。
未だに熱を持つ頬。

「ねえ、雲水、なんで叩いたの、痛いよ」

ぼろぼろと涙を流しながらなまえが言うと、雲水は困ったように眉を寄せて、なまえの赤く腫れ始めた頬に手を添えた。

「なまえは俺と一緒にいるのに、他の男の名前なんかを出すからだよ。こんなにも君を愛しているからこそだよ、許してくれるだろう、なまえ?
なまえは優しいもんな」

雲水はなまえの鞄から携帯電話を取り出すと、口元を緩ませてニコリと笑んだ。
なまえは優しいもんな。
いつもと違うように聞こえるその言葉に、なまえは怯えながら頷く。
これは没収だな、雲水はそう言ってなまえの携帯電話を地面に叩きつけ、踏み壊した。

ああ、なまえ。
可愛い俺のなまえ。
君ならきっと分かってくれる。


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