本
「オイなまえ、今日空いてるか」
「空いとらん」
「おー空いてるか。じゃあ隣町のゲーセン行こうぜ」
「空いとらん言うてるやろ!今日お友達と遊びに行くんやけど!!オイ阿含!」
神龍寺の寮は今日も騒がしい。
黒い短パンにTシャツという女子にあるまじきシンプル過ぎる格好で、なまえは頭を掴む阿含の手を離そうと奮闘する。
阿含は少し額に青筋を立てた。
「うおおお!!」
「ぐっ、」
なまえは畳に置いていた座布団を蹴り上げ左手のあたりに持ってきて、その座布団を阿含の顔に押し付ける。
見事命中。
更に出しっ放しにしていた布団を投げつけ、机に置いていた財布と携帯をポケットに突っ込み、サンダルを持って麦藁帽子を被り窓から飛び出した。
因みに二階である。
ズダッと物凄い着地音と共になまえはよろけながら自室から脱出したのだった。
「ゲッ、お前近いうちに死にそうだな」
「ウチはそんなひ弱やないで!」
「そういう問題じゃねーよ!」
阿含の叫び声を無視し、なまえは走り出す。
「ほな、雲水達に言うといてな!!」
「誰とどこで何して何時に帰ってくるか言え!」
「友達と東京で遊んで8時半頃帰ってくる!」
「門限の6時過ぎるじゃねえか潰すぞ!俺も行く!」
「高校生が門限とか気にするなや!阿含毎回破っとるやん!」
阿含の大声の奥から、雲水の阿含に向かって放たれた怒鳴り声が聞こえる。
雲水のこの怒りはなまえにも飛び火しかねない。
なまえは、阿含から逃げるように走った。
階段を駆け下りて、またいつもの駅に着く。
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