当日、アイツと組んで走った。
上手く歩幅合わせて走ってやろう、とか思いながら紐を結んでいると、アイツは全力でいいよ、とか笑って言う。
はー?なんて呆れれば、アイツはまた笑った。
それがなんだか気に食わなくて、もしこいつがコケそうになったら少し肩を掴んで浮かせて一人で走ってやる、と思った。
スタートから全力でとばした。
息を浅く吐き、足と隣のコイツに全神経を集中する。
周りの歓声やら怒号は聞こえなくなった。

「うっわ金剛本当にはやい!!」

アイツはちっさく叫びながら俺についてくる。
珍しく俺は、こいつ本当に早いんだな、と感心した。
俺たちは、二着の奴らに20秒差で勝った。
顔をあげると、席の方で雲水チャンが手を振ってくる。
満面の笑みで、俺たちを見ながら。
一着のシールを体操服の袖に貼っていると、いつのまにかアイツが紐を解いたのか雲水チャンの方に走っていった。
やっぱ早いな。

「雲水ー!!!一等とったよ、凄いでしょ!」
「ああ、凄いな」

きゃあきゃあと騒ぎながら、アイツは雲水チャンに自慢する。
ああ、アイツら知り合いだったのか、と思いながら、俺は自分のチームの方に戻って行った。
そうやって、ニコニコ笑っている二人が羨ましいとも思った。
雲水チャンがチラッと俺を見て手招きをしたが、なんだかそれがイラっとしたので無視して人混みに紛れた。
ハチマキを締め直すと、砂糖に群がる蟻のように、周りにいた同じチームの奴らは俺を囲んだ。
他の演目にも出ろと、囃し立てた。
まあいいか、とか満更でもないように返事をすれば、周りから黄色い声があがり、リレーや短距離走に出ることになった。
それら全ての演目で一等をとった。
それでも何かが満たされず、未だに話している雲水とアイツを見て、俺は奥歯を噛んだ。



*前 次#


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -