「……寂れてるねえ」
「……そーだな」
じわじわと照りつける太陽。
汗をだらだら垂らしながら涼しい電車から降りる。
隣のみょうじは汗をぬぐいながらニカッと笑った。
暑い時も寒い時も笑ってる。
コイツは疑いようもなく変な奴。
駅から出てすぐに看板が目に入った。
「……海」
「うーみー!」
「オイ馬鹿!走んな!」
「海が私を呼んでいる!私も海を呼んでいる!これは走るしかない!」
訳のわからないことを叫んだ後、ダッと走り出していくみょうじ。
クソ、めんどくせえ。
追うようにバタバタ走っていく。
コイツ道分かってんのか。
生温い風に乗って、潮のニオイがした。
「ふ、ふおおお!ひゃっほー!」
「こんのっ、お前!オイ!」
サンダルを脱いで、みょうじは砂浜を走っていく。
ゴミとか貝殻の破片とかあんだから、足の裏切っても知らねーぞ。
バシャバシャと海水が跳ねる音がする。
みょうじのサンダルを手に持って近づく。
タオルも持ってねーのに、どうすんだ。
「アハハ、冷たい!気持ちいい!金剛、コッチ来なよ!」
「……ったく、」
こんなんでみょうじに付き合ってやっている俺はどうかしてんだろうな。



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