「……海行くか」
「うみ?」
「電車で、すっげー遠いとこまで」
「おお!楽しそう!行こう行こう!」
にまにま笑いながら、みょうじは俺の隣を歩く。
小学生みてえだな、と見てて思った。
オレは絶対中学生に見えねえし、周りからは小学生を誘拐した高校生のようなものに見えるのだろうか。
そんなことを考えながら歩く。
サッとすれ違った派手な金髪。
今は大した興味もない。みょうじと適当な下らない話をして駅のホームに入った。
暑い。蒸し暑いホームにはミンミンと煩いセミの鳴き声が響く。
みょうじはホームの椅子に座って、某ボクシング漫画のジョーみたいに白くなっていた。
自販機でコーラを買うと、みょうじが物欲しそうな顔をして俺を見上げた。
「ほれ」
「おお!やった!あんがと!」
俺が何も小細工をしないで渡すと思ってんのか。
キャップを逆に回してギチギチに締めてやった。
「こ、金剛……固い……開かない!」
「あ?くく、いーんちょは非力だなぁ」
ヒョイと開けてやると、みょうじは首を傾げてコーラをまじまじと見る。
どうなってんだ、とか言ってる。阿呆みてえだな。
サッとコーラを掠め取ってぐーっと飲んだ。
「あー!私も飲みたい!」
「うるせー。やるから黙れ」
「わーい」
押し付けてやると、みょうじは嬉しそうにコーラを飲んで、キャップを閉めた。
黄色い線の内側にお下がりください、というアナウンスが流れる。
じわじわと照りつける太陽。
鳴き止まないセミの声。
夏だなあ、なんて漠然と思った。
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