あれは夏休みのことだった。
隣町の並盛まで足を延ばしたときに、目に留まった女の子。
最初はあの橙色の子に似ているから、気になったのかと思ってもう一回見たけれどそんなことはなかった。だけどまた気になってもう一回見たら、誰かに似ていた。
それが誰だか思い至らなくてもやもやしていて、唐突に甘いものが食べたくなってわざわざアイスクリーム屋に並んで買った。
さっそく近くのベンチに座って、一口口に含む。その冷たさと甘さの絶妙なバランスを味わっていたら急にわかった。


「あのこ、人識にそっくりやったなあ……」


ひとつ下だった、弟。と呼ぶにはなにかが違っていたかもしれないけれど確かに彼は家賊だった。もっとも年がすごく近いせいもあってか、家賊として敬ってもらったことなんてないけれど。
あいつはこのバランスをバラしてしまうような奴だった。だけど家賊だったし、年も近かったからそれなりの関係を築けていた気がする。
あのこ、もう一回会えるだろうか。
急に話しかけたらただのナンパだけれど、弟に似ている…って言ってもナンパか。とりあえずうまく話しかけて少し話してみたくなった。


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