教室に入って、窓側後ろから2こ目というとてもラッキーな席に向かう。
この席になれたことはぼくの数少ない幸運かもしれないな。
始業のカネが鳴るまであとすこし。京子ちゃんたちのところにお邪魔するのも時間が足りないので、ぼくは頭の中で《エイトクイーン》をはじめた。と、いってもいつも5個目のクイーンが終わったところでごちゃごちゃしてしまうので終了だ。ううん、相変わらずだなぼくの記憶力の悪さも。この記憶力の悪さでも《ぼく》のことは覚えているんだから嫌になっちゃうよ。

うちのクラスは遅刻ギリギリに駆けてくる人がけっして少なくないからだんだんと騒がしくなってくる。
だけどいつもこれだから隣の席あたりが騒がしくなったところでぼくはやっと顔をあげた。


「おはよう綱吉くん」
「お、おはよういろはちゃん!」
「きみは相変わらず重力に逆らった髪型をしているね」
「えぇえ!?なんで朝一番から髪についてダメ出しされてんの、オレ!!」
「ぼくは正直だから、さ。黙っていられないんだよ」
「それでも言っていいことと悪いことがあるから!!」


「ああもう…」とぐったりと席についた綱吉くんを見てああ今日もはじまるな、と感じた。こんなやり取りも毎朝のことなのでふたりとも慣れたものなんだ。
山本武くんなんてカラカラと「毎日ごくろーだよな!」と笑っているし、獄寺隼人くんは少しこっちを睨んでいる。でも目があったらあわててそらした(これも毎日のことだけどなんでだかわからない)
この3人は比較的仲のよい友だちといえるはずだ。例えぼくが友だち甲斐のないやつでも、少なくとも綱吉くんと山本武くんは友だちだって思っているだろうから。前世の大学で《彼女たち》すら友だちだと思えなかったぼくにしては大きな進歩。これもきっと、


がらがらと音をたてて教室のドアがひらかれる。「おーい、席につけー!」とぼくたちの担任が声をかけてきた。いけないいけない、考えすぎちゃダメだ。
ぼくはこうしてここにいる。玖渚のやつは、いまは隣にいないんだ。
あのときから10年後、ぼくは進んでいったようにいまもまた進まないといけない。それがどんなに寂しくても。











「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -