「おねえさんっ!学校って楽しいところなんだねっ」
「ああそっか、理澄ちゃんもはじめてなんだっけ?」
「逆にぜろっちみたいに行ったことがある《殺人鬼》のほうが珍しいと思うぜぇー?」
「そりゃあオレは偉い奴だったからな。てか学校でちゃんとモラルとかお前は学んどけよ」
「でもぼくも学校は行かなかったなー!必要なかったもん」
「ミオちゃんは例外でしょ」


並盛中のブレザーに身を包んだ《殺し屋》と《名探偵》の兄妹。前と同じように出夢くんは頭に眼鏡をかけて、理澄ちゃんは眼鏡を目にかけている。ちなみに体は女の子だけど心は男の子という複雑な事情をもつ出夢くんは、当然のように女子の制服を着ている。こちらのほうがいちゃつきやすいから、だそう。……いちゃつき?
ここ最近増える転校生に騒がしくなるぼくのまわり。だけどこのクラスはもう慣れたのかなにも突っ込んでこないっていう。ぼくの通ってた大学じゃないけれど、スルースキルが高いっていうのはとてもポイントが高いと思う。
今日は綱吉くんたちボンゴレメンバーは修行だかなんだかでいない。だからポロッと昔のことを大声で話しても大丈夫だった。


「あ、そーだ。ぼく明日からしばらくいないからー」
「みぃちゃんどーしたの?いないと寂しいんだねっ」
「それはすごく嬉しい言葉だねえ。だけど残念、ボンゴレのほうから依頼がありましてお仕事なんだよね」
「え、受けたのミオちゃんが?」
「……いろはちゃんはぼくをなんだと思ってるんだよう。まあ、コンピューターシステムをちょちょいとね。将来つーくんのためにもなることだし。てことで!ひーくんもいずくんもいろはちゃんを襲ったときはぼくに連絡すること!」
「ん、わかった」
「はあい!」
「ちょっと言わせてもらうと、ぼくは襲われる予定はないし君たちはなんでそういうときだけいい子のお返事なんだよ!」
「だっていい子だもん」


絶対違う。殺人鬼がいい子とかないよ、それこそ傑作だ。


「さあて、じゃあぼくは行くねー!みんなばいばーい」
「……僕たちも買い物に行くか、理澄?」
「うんっもちろん行くよ、兄貴っ!」
「じゃあおねーさん、ぜろっち。また明日!ぜろっち、おねーさんのこと襲ったら僕の平手打ちが頬に叩きこまれるぜ?」
「ってそれ《一喰い》じゃねーか!!死ぬだろ、オレ!」
「ぎゃははっ!さよーならのちゅー!」


出夢くんはぼくの頬に口付けひとつ。もう毎日のことなので慣れてしまった、相手は見た目がかわいい女の子だし。だってあいさつみたいなもの、なんだろう。「あたしもっ」と理澄ちゃんも反対側にちゅーしてくるからさらに役得と言えばそうだ。やっぱりふたりとも見た目はかわいい女の子だ。
ぼくのまわりの騒がしさが一気になくなる。《人間失格》とだけならば、さすがに鏡だからかそこまで騒がしくないぼくたち。このあと彼はどうするのだろうか、と視線を寄越せばニヤニヤと笑う彼がいた。


「かはは。珍しく誰もいないことだし、このまま放課後デートと洒落込みませんか、おじょーさん」
「その棒読みのおじょーさんが気に入らないところだけど、丁度ぼくも暇なところなんだよね。君と遊びに行くか、お兄ちゃんのところでお茶するか…」
「絶対オレとデートな、決定。プランはもう考えてあんぜ!」
「まあ、いいけど」

よし行こうぜ、と手を出されたから握り返す。けれど違う違う!と違う握りかたにされた。これはぼくでもわかるぞ、いわゆる恋人つなぎというものじゃないか。

「まず31に行ってアイス食ってーファーストフード行ってーんでゲーセンでプリクラ撮ろうぜ!」
「お前はどこぞの女子高生か。…ていうかそれだと本気でデートみたいじゃないか」
「もちろん、だって最初っからそう言ってんよ」
「……戯言だと思ってたよ」
「かははっ傑作だろ。鏡同士がデートなんてな」


だから手も恋人つなぎだもん。とかわいく言う殺人鬼。…まあ、たまにはこういうのも楽しいかもなんていうのは、戯言遣いとしては《失格》かな?いや、彼の言うとおりこれは《傑作》だろ。









「あ、うん。はーいそうです。…えへへ、まさかコンタクトを取ってくるとは思わなかったでしょう?…いいえ最近活動をはじめたばっかり、だから驚いてるもん。……そーですねえ、はい。ぼくは、なんにもしていませんから、これは一種の続きなのかなあ?みんなで楽しく過ごせればいいなって思っているけれど。あ!ひとつ面白いこと教えます。戯言遣いはいま――」






寒気がした。


「んっ!?」
「どーしたよいろはちゃん」
「ちょっと、寒気がさ…」
「あー夕方だし寒くなってきたもんな。騒げば暑くなるんじゃね?」
「あ、うん…そう、だよね?」
「なんだよいーたん。もしかしてなんか感じちゃったとか?」
「わかんない……でもそうかもな。だけどどっちかっていうと…危険っていうよりは…懐かしい感じの寒気だった」
「おいおい…出夢だけで勘弁だっつーのにまたなんかくんのか?まあ、どんなんになってもいろはちゃんのことはオレが守ってやんよ」
「! ちょっ………うん」
「あれ素直……、!!いろはちゃんこっち向いて!」
「嫌だっ!て、おいっ」
「かはは顔真っ赤ーかわいー!」
「ああもう!きみが不意打ちなんてするからだよ」
「だって本当のことだもん。捕まっても助けに行くからさ、待ってろよ?」
「…信頼してるよ《人間失格》」
「おうよ、《欠陥製品》。よしこのいい雰囲気のままプリクラ行くぞ」
「台無しだろ、ひとしきくん!」
「かははっ」


なにか大きなものがやってくる、みたいな。たとえ鈍いぼくでもなんとなく面倒だってわかった。











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