同級生であった女性、パンジー・パーキソンから3年ぶりに手紙が届いた。なんでも来月末に籍を入れていた男性と式をあげるそうだ。手紙の中には幸せそうに映る2人の写真が同封されていて、どちらともなく見つめあって口づけするさまには1人苦笑をもらしてしまった。学生時代には、何の恥じらいもなく自分の腕にすり寄ってきてペチャクチャと喋る彼女と写真の向こう側で赤くなってそっぽを向く彼女は同一人物とは思えなくて奇妙な気持ちになった。

写真を裏返すと綺麗な字で文章が書いてあった。そういえば、彼女は学生時代から大人びた美しい字を書いていたことを思いす。


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ドラコへ

貴方が今の愛する人と婚約して2年が経ったわね。当時はどうして私を選んでくれなかったの!と地団駄を踏んだものですけど、今、私も運命の相手だと思える人を見つけました。本当に幸せだわ。
式には勿論きてくれるわよね。じゃないと、当時の私が浮かばれないわ!

追伸。
来週の日曜は彼女の誕生日だけど、もしよかったら一緒に行かないかしら。私は彼女に私の幸せを自慢しに行くだけですけどね!

今最高に幸せな時を過ごしているパンジーより
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実に彼女らしい文章にまた笑みがこぼれる。それと同時に追伸の言葉に胸が締め付けられる想いがした。パンジーは彼女の誕生日なんて知らないものだと思っていたが、そんなこともないらしかった。不意に過去の情景が憂いのふるいにかけたように思い出される。



「なんで貴方ってばさっきから私のあとをついてくるのよ!」

「なんだと!?誰が好き好んでお前の後をついていくんだ!僕もこっちに用があるだけだ!」

「あらそう!ならば歩調を合わせないでほしいわ!ドラコ・マルフォイ」

彼女はとても可愛らしい女性だった。正直言うと、僕は初めて彼女を見たときに目を奪われていた。彼女が同じスリザリンならばいいのにと強く願ったが、人生とはそんな単純なものではない。彼女はグリフィンドール生となり僕と対立する関係になってしまった。彼女自身はスリザリンというだけで敵対心を抱いたりしない人間であったが、グリフィンドール生を馬鹿にするものとなれば堂々と喧嘩腰に話しかけてくるような強気な女でもあった。

「どうして貴方って人はそうなの?口を開けば純血だどうだって、そういうのとっても馬鹿らしいわ」

「ふん。お前には関係ないだろう!そんなことで話しかけてくるな」

「何よ偉そうに!」

そう言った彼女は目にたくさんの涙を含んでいてドキリとした。それと同時にその日から彼女は僕を無視するようになった。

「おい」

「……」

「聞いているのか!」

ゆらゆらゆれているポニーテールをひっつかんだ。彼女は顔を歪ませる。

「何するのよ!」

「お前が無視をするからだろう!」

「何よ!貴方が話しかけるなって言ったんじゃないの!あなたの嫌いなグリフィンドール生が話しかけてくれなくてさぞや満足でしょう!?」

「それは」

「これ以上関わらないで頂戴」

「いいから聞け!この前のことは、僕が悪かったから」

「!」

「お前と話せなくなるのは、その、なんというか、つまらないんだ」

「私は貴方が嫌いな穢れた」「それ以上言うな」

「意味分からないわよ。何でいきなり…」

彼女の睫毛がふるりとふるえて僕を見ていた。

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「え、何を、言ってるのよ」

「何だ、もう相手がいるのか」

「いないけど、私とだったら貴方が」

「僕がお前と行きたいから誘っているんだ。お前が、いや、君がいいなら僕とダンスパーティーにでてくれないか」

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「可愛いな」

「ちょっとお世辞はやめてよ!」

「お世辞じゃない!僕はずっと……いや、いい」

「何よ、あなたってば変な人ね」

「な、なんだと!」

「でも、好きだわ」

「は」

「あなたが好きよ、ドラコ・マルフォイ」

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「ねえ、どうして急に別れるだなんて」

「五月蝿い、ついてくるな」

「お願いがいよ!行かないでドラコ」

「分かるだろ?僕は純血の家系に生まれた。そして、もう、例のあの人に」

「まさか……だめよ!逃げましょう!」

「無理だ!家族が人質になっているんだぞ」

「そんな」

「君のことを愛してる、だから僕には関わってほしくないんだ」

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「アバタケタブラ」

「あぁあ!」

悲痛な悲鳴に振り替えると見ぬ間に美しくなった彼女が倒れていた。どうやら彼女は小さな子供を庇って魔法にあたたったようで、そばかすを鼻にのせた男の子がしりもちをついて倒れていた。

「ナマエ!」

走り寄って彼女の肩をだくと虚ろな目で僕を見た。

「死ぬな!ナマエ!」

「ドラコ…」

「お願いだ、ちゃんと僕を見て」

「ずっとずっと、あいたかったわ」

「僕もだ。この戦いが終わったら君にプロポーズしようと決めていた。だから、死なないでくれ」

「うれしい」

「あぁ。君が僕の妻になってくれると信じてた」

「きすして」

彼女は潤いのある目で僕をみつめる。紫色の唇にキスをすると驚くくらいに冷たくて怖くなった。彼女の顔をもう一度見つめると瞳からこぼれ落ちた涙がひかりの筋をつくっていた。どうして僕は君を泣かせてばかりなんだ、情けない。

「あなたのこと、だれよりもあいしてるわ」

長いまつげは伏せられて、静かに呼吸の音が消えていった。



「手紙?どなたからなの」

「パンジーだ」

「あぁ、パーキソンさん」

「式をあげるそうだ」

「ふふ、じゃああなた残念ね」

妻が僕に向かって意味深に微笑む。この表情がどこか彼女に似ていて僕は時々目の前にいるのが誰なのか分からなくなってしまう。

「何故だ」

「あなたに好意を抱く人が減っちゃうでしょ」

くすくすと妻が笑う。笑い声から育ちのよいお嬢様らしくて、やっぱり妻は妻だと思った。彼女はこんなふうに上品に笑ったりはしない。

「ふん」

「冗談よ」

「分かってるさ」

「ふふ、怒らないで。私はずっとあなたのことを愛してるわ」

「当然だ」


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きみのこと、だれよりもあいしているよ
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