「いけえええ!!」
皆が息を飲むなか夏希さんの手札から"桜"の札が置かれて、ステージのあたり一面が桜の樹に埋め尽くされた。夏希さんの勝利がきまったのだ。
家族全員が歓声にわき勝利に飛び上がった。私も近くにいた理一さんとハイタッチをする。
「ちょっと待て!カウントダウンが止まってないぞ!」
太助さんが液晶モニターを見ながら絶叫する。私はさっと血の気が引くのを感じた。まさか、まだ、終わってない。
「侘助さん」
震える声で侘助さんを呼ぶと侘助さんも強ばった表情でノートパソコンを睨んでいる。
「そんな、衛生がここに落ちたら大変なことに……」
衛生が落ちるまで残り10分をきったところで一同が避難の準備を始めた。
「名前も、自分の荷物持ってはやく」
「は、はい」
自分の荷物を取りに行こうとしたとこで侘助さんと健二さんが話しているのがみえた。
「二人とも避難しないと!」
「お前は自分のこと考えろ」
侘助さんが切迫つまった顔でキーボードを打ち続ける。 侘助さんは、残るつもりなんだ。優しい侘助さんのことだから、大おばあちゃんのことも自分のせいにして背負い込もうとしてるんだ。
「まだ負けてない!」
夏希さんが叫んだとこでハッとした。
「侘助さん、がんばって!!」
侘助さんの隣にもう一度腰をおろして横で歯をくいしばる。
「お前、はやく避難しろって」
「私は今日は侘助さんの助手だし!!侘助さんならできるって信じてますから!!」
侘助さんが呆れたように息をはいて笑う。
「馬鹿なやつ」
気がつけば家族全員がこの家に残っていた。そして――
「かずま!やつを叩け!」
ラブマシーンはキングカズマの一撃をうけて大きく飛ばされていった。今までのことが嘘みたいにラブマシーンが消えてゆく。
「名前!」
かずまくんが私の名前を呼んで腕をのばした。その腕に私は自ら飛び込む。大きな衝撃音と地鳴りがするなか、私は太陽の匂いをいっぱいに吸い込んだ。
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