直美さんと音がした部屋へ行くとかずまくんがキーボードを力任せに叩いて項垂れていた。
「母さんを、妹を、守れなかった……」
キーボードとを叩く力任せさとは裏腹にそう呟いた声は弱々しい涙声だった。どうして、何があったの。
部屋のモニターを見れば、大きく禍々しいラブマシーンが映っていた。まさか、戦いは、戦いの結果は
静かに次の策を考える健二さんに、かずまくんが食って掛かる。こんな、取り乱したかずまくんを見るのは初めてだ。手に汗が滲む。
私は、かずまくんのこと、支えたい。いつかのとき何度も私を支えてくれたかずまくんみたいに。
夏希さんと健二さんが広間を出たあともかずまくんはキーボードの前に手をついて項垂れていた。太助や理一はかずまくんの肩をぽんっと叩いたり「よくやった」と声をかけて広間をあとにしていた。それでも、かずまくんは誰の声にも反応せず、ピクリとも動かない。私は爪が手のひらに食い込むほど握っていた拳を開いてかずまくんの隣に膝をついて座った。
「かずまくん」
かずまくんからの反応はない。
「かずまくんってば」
肩をゆするとかずまくんがハッとして私を見た。
「名前、見てたの?」
私はドキリとして、それでも、おずおずと頷いた。かずまくんはくしゃりと眉間にしわをよせて、そっぽをむいた。
「カッコ悪いとこみられるなんて最悪だな」
「そんなこと、」
「やめてよ!僕は、僕はまたアイツに!くそ!」
私はかずまくんの震える手に自分の手を重ねた。かずまくんはビクッと肩を震わせたもののこっちを見てはくれなかった。きっと、私の心臓の音が手から伝わってきこえてしまっているんだろうな。どっくん、どっくんと五月蝿い心臓の音を聞きながら思った。
「カッコ悪くなんかないよ」
かずまくんはいつだってかっこいいよ。私がちょっとだって叶わないくらいに。
「私はかずまくんの真剣な横顔知ってるもん」
まだ、震える手を私は両手で握りしめた。
「今度は私がかずまくんのこと励ますからね。がんばるからね。覚悟しててね」
両手がぐんって引っ張られてかずまくんの方に私の体が倒れ込む。首にかずまくんの細い両手がまわって私をぎゅっと抱き締めた。
「馬鹿でしょ」
「少しは元気になった?」
「まだまだだよ」
かずまくんの両腕の力がぐぐっと強まる。
「いたたたた!いたい!かずまくんわざとやってるでしょ!!」
「当たり前じゃん」
私のおでこにコツンとかずまくんのおでこがぶつかった。ふたりの顔はきっと真っ赤。
「好きだよ」
小さく小さく呟かれたその言葉は、私の耳にちゃんと届いていた。
□□□
「何、あのバカップル……」
「最近の中学生はませてるのね」
「少しでも夏希に分けてやりたいわ」
「ほら、直美、里香、行くわよ」
「えー」
万里子が二人の袖を引っ張る。聖美はかずまのほうを見て、くすっと笑うと大きなお腹をなでて広間をあとにした。 |