右に左に拳がだされたと思ったら、次は素早くきれいにキックがつき出される。それはもうどっかのキングうさぎみたいだ。
「かっこいー…」
「ほんとだね…」
「ええ!」
私の呟きにまさかの返事がきたので驚いて横を向くと苦笑いした健二さんがいた。まさか、聞かれてたなんて。めっきりばっきり不覚。
「よし一発蹴られてこよう」
「ちょちょちょ、どうしたの!」
「いや、一発蹴られたら見られたことが頭からとんでくかなっておもいまして」
「意識も一緒にとんでっちゃうよ」
「あら、健二くんに名前ちゃん」
かずまくんママがこちらへやってくる。腕に抱えてる着替えとタオルはかずまくんのかな。
「かずまくん、キングみたいだ」
健二さんがぼそりと呟く。それにかずまくんママがふふふっと笑いった。
「あれでも、かずま昔はいじめられっ子だったのよ」
「え!」
健二さんと私の声が重なる。
「だから次男のおじさんに少林寺を習ってね」
「ああ、だから師匠って呼んでるんだ…」
「そう」
私はかずまくんの方をもう一度見る。あんな細い腕でかずまくんは何人の人と戦ってきたんだろう。ぐっと指に力がこもる。健二さんは何かを思い立ったようにどこかへ走っていった。そういえば、ラブマシーンと戦うっていっていたなあ。
「男の子はすごいです。いろんなものに戦いを挑んで」
「そうね」
「なんだか、私、くやしいな」
かずまくんママがじっと私の顔を見た。なんだか照れます。
「はい!」
かずまくんママが景気のいい声をだして私の手に着替えとタオルを渡した。
「えっ」
「女だって、強いわよ!」
「は、はい」
「名前ちゃん、かずまの背中押してやって」
にこにこ。ひまわり笑顔が私を見ている。私はどきりとしてうつむいた。
「できます、かね?」
「できるわよ!」
きっと大おばあちゃんの意志は誰かが忘れない限りここにあるんだ。
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