ミーンミンミン、ミーンミンミン

蝉は相変わらず大きな声で鳴いていた。

子供のときに誰かに教えてもらったことがある。蝉は気が遠くなるくらい長い間土の中にいるのに地上にいられるのは、たった1週間程度。だから、1週間くらい精一杯鳴かせてあげて、と。

何故、大声で蝉は鳴き声をあげるのだろう。幼いながらにずっと不思議に思っていた。小学校6年生の夏にふっと思い出してめったに行かない図書館へ足を運んだ。

蝉は1週間しかいられないのに子孫を残すために大声で鳴くんだそうだ。
それは、まるでとめどなく続く生命の音を聞いているようで少し切なくなったのを覚えている。




「ここの暮らしはどうだい?」

大お婆さんに連れられて向日葵畑へきた。(向日葵畑と行っても、門の外へは出てないのでここの庭なのかもしれないけど。)まるで私の気持ち全てが見透かされているんじゃないかと思った。

「皆優しい方で楽しいです」

「そうかい」

空を見上げれば吸い込まれてしまいそうなくらいに綺麗な青と、大きな入道雲の白が見えた。

「私には名前さんが何か悩んでるように見えるね。何かについてはあえて聞かないが」

驚いて大お婆さんを見れば、いつもの笑顔がそこにあった。何故か、懐かしくて、安心する。これは夏希さんの笑顔に似ているから?ううん、違う。何だろう何でこんなに安心するんだろう。

「わたし、多分、自信がないんだと思います。いろんなことに自信がない」

「そうかい」

「でも特別なんです」

「そうかい」

「失いたく、ない」

彼のことをずっと、考えてた。気づけばずっとずっと考えてた。私は、本当は、

「かずまは昔、いじめられっこだったんだ」

「え?」

「だから人見知りなとこがあってね」

かずまくんが、人見知り……

「きっと、かずまにとって名前さんは特別なんだろうね」



理由は分からないけど、視界が少し歪んだ。

とくべつ、とくべつとくべつ

「大お婆さん、ありがとう」

「何がだい?私はただ向日葵を見に来ただけだよ」

心が晴れたように清々しい。きっと今まであったモヤモヤは大お婆さんの向日葵みたいな笑顔が全部晴らしてくれたんだ。

「私、家に戻ります!」

「いってらっしゃい」
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