「僕は名前が好きだ。でも名前がいやだったなら、もう忘れる」



かずまくんが私を好き?



そんなの信じられる?かずまくんは格好よくて、優しくて、力持ちで、私がずっとずっと尊敬していた人で。そんな人が私を好きだなんて。

だって、そんなの普通に考えてありえないことでしょ。だから、私はかずまくんが冗談でキスしたとしか思えなかった。いつもの頭をわしづかみされたときみたいにスキンシップみたいなそういうおふざけだと思ってたの。

なのに、かずまくんが、あんな顔するなんて……

ここにきてから、かずまくんのいろんなとこを知った。笑った顔や怒った顔や照れた顔、悲しい顔、全部私に向けてくれた表情。どんなときも、不器用でも私を助けてくれようとした。



そんな人を、失いたくない。



縁側のふちに体操座りをして膝に頭を埋める。蝉の五月蝿い鳴き声が少し小さいなった気がした。

嗚呼、そういえば日焼け止めを塗るの忘れてた。今年こそ美白を目指そうって決めたのに、なんて仕打ちなの……

3日前にも同じことを考えた。たしか、あの日はかずまくんと初めてまともに話した日だった。ふつうなら仲良くなっていくはずなのにね。どんどんかずまくんとの距離が離れていく気がするの。



「名前さん」

膝から頭をあげて見上げると大お婆さんが向日葵みたいな笑顔で私を見ていた。たぶん、夏希さんはお婆さんに似ている。笑顔がそっくりだ。こっちまで元気にしてしまうような豪快で快活な笑顔。

「少し、時間あるかい」

唐突なことに固まっていると、大お婆さんが「だめなら、また今度にしようかね」と言った。

「いえ!大丈夫です!なんでもお手伝いします!」

「そうかい」

大お婆さんはまた向日葵みたいに笑った。










俺のターン!大お婆さん発動!これでダイレクトアタックだ!(非常に申し訳ない感がでてる)
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