「池沢くん、遅れてごめんね!」

「結構待ったけど大丈夫」

「うっ…」

みなさま、こんにちは。私名前は只今かずまくんと一緒に帰宅する予定なのです。決してデートとかじゃないよ!確かにデートはしたいけどかずまくんと私なんて釣り合わないよまさに月とスッポ(以下略)。

「じゃあ行こ」

「あ、うん」

歩きだす前にかずまくんが私の荷物をひったくってくれ…じゃなかった、持ってくれた。わわわあ!なんて紳士なんだろう。私にこんなに優しくしてくれた男の子初めてだ。あ、なんか少し惨めな気持ちになってきた。ってそうじゃなくて。

「池沢くん!私の荷物重いし、池沢くんも自分のがあるから大変だよ!私持ちゅから大丈夫!」

いけない、焦りすぎて噛んだ。

「べつに重くない」

そういって軽々と持つ池沢くんに思わずと、と、ときめいた。紳士池沢のここにあらわる。

「それに、名字さんが持ってたんじゃいつまでたっても帰れなくなりそうだし」

ひどい!と私が言うとかずまくんは冗談だよ。って笑った。私には冗談かどうか疑わしく感じたけど、かずまくんの機嫌を損ねちゃったらやだし、そこにはふれないでおこう。私がうーんうーんと荷物を見ながら唸っていると「じゃあこれ持って」って小さい袋渡された。やっぱり大きいほうは自分が持つんだな紳士池沢くん。「勿論です!池沢くん!」そういって袋を受け取るとかずまくんがこっちをじっと見た。

「?、どうしたの?」

「いや、なんでもないけど」

「そう?」

「うん」

そっから話題が思いつかなくて、どうしようかなと俯くと透明ビニールの中のあるものが気になった。

「池沢くんは妹がいるの?」

「え、なんで」

「だって粉ミルク」

私が透明ビニールを掲げるとかずまくんは「ああ」と納得した。

「まだ、生まれてないけどね」

「へぇー、うらやましいなぁ」

「名字さんは兄弟いないの?」

「一応いる、かな」

「一応?」

「うん。すっごい歳はなれてて今遠くにいるんだけど」

「意外。一人っ子ってイメージがあった」

「そうかなぁ」

「うん。意外」

「私は池沢くんの方が意外に感じたけどな」

「何が?」

「しん…」

言いかけて自分に歯止めをかける。「紳士池沢ここにあらわる!」なんて言ったら引かれるとこだった。危ない危ない。

「しん?」

「あ、いや、し、し、親切なとこ!」

「そうかな」

「それから力持ちなとこ!」

「…普通だよ」

「そんなことないよ。すっごい助かったもん!」

池沢くんの方を見ると俯いていた。あれ、なんで!?私なんかまずいこと言ったかな。鼻息が荒すぎたかな。どうしよう。

「えと、池沢くん?」

「……かずまでいいよ」

そう言ったかずまくんの顔は少し赤くてなんだかこっちが照れた。

「じゃあ私も名前ね、かずまくん!」

緩みっぱなしの顔でいうとかずまくんに頬を捕まれた。いだいだいだだだ。力強い。手加減ない。痛い。



「名前って馬鹿」
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