「んん…もう朝、か、」
目が覚めるとキラキラと強い日差しが目に染みてまるで私に早く起きなさいと言ってるみたいだった。それでも、頭がずきずきして、ゴロリと寝返りをうつと……隣には名前も知らないお兄さんがすやすやと眠っていました。ちょ、待ってください。私まだ中学生ですよ。早いですよね!?それより、このお兄さんロリコ「あぁぁあぁぁあああぁぁあ!そんな馬鹿なぁぁあああぁぁあ!」
「んー……あ?」
お兄さんは目をゴシゴシ擦ると死んだような目で私を見た。
「お前誰だ?」
「こ、こ、こっちが聞きたいくらいですよ!」
「あ」
「…何ですか?」
お兄さんは何かを思いついたように声をあげる。私が話を聞こうとそばに近づくと、がしりと手首を捕まれた。ひぃ!何この人!
「離してください!昨晩のことなら何にも思いだせません!」
「は?お前正気か?」
「そんな馬鹿な!やっぱり私の貞操は奪わるられっ」
痛い!このお兄さん容赦なくぶっ叩いた!もうすでにそんな仲になってると勝手に勘違いしてるんじゃないのかな!昨晩のことは覚えてないんだってば!
「仮にも女がそんなこと言うな」
「えーっと、そんなことより、どういうことか全く分からないんですが」
「は?本当になにも覚えてないのか?」
「す、みません」
「まぁ、俺はいいけどよ」
はいはい、なるほど。つまり私が一人で廊下をとぼとぼ歩いていた。お兄さんは親切にも道を教えてあげようと肩を掴んだ。そしたら私が泣き出したと、
「なんで私泣いたんですかね?」
「俺が知るわけないだろ」
お兄さんはそっけなく言うとどこかへ行ってしまった。ふぅ、私も早く部屋に行って着替えないと。よっこらしょ、と腰をあげると襖がバンッと音をたてて開いた。
「大丈夫か!」
「あ、理一さん」
「ごめんね、名前ちゃんの貞操を守れらるれっ」
理一さんはどこからともなく飛んできた厚い辞書により撃沈した。うわあ、広辞苑は痛い。あとで氷もっていこう。
「何やってるの名前ちゃん。心配したわよ」
「あ、ごめんなさい万里子お姉さん」
「分かったなら、早く手伝ってちょうだい」
「はい!着替えて顔洗ってきます」
腕まくりをして洗面所へ大股で歩きだす。しかし、すぐに見たことがある景色をみつけてぴたりと足を止めた。私は昨日ここで泣いていたのかな。
昔はもっと泣き虫だった。お留守番も、注射も、ピーマンも大嫌いで、何か嫌なことがあればすぐにわんわんと泣いていた。それでも、あの時には優しく頭を撫でてくれる人がいたんだっけ。
急に、まだ思い出せない昨日の記憶をそのままどこかへほうり投げてしまいたくなった。悲しいことなんて、知らないままでいいもの。間違った考え方だとしても、今の私には悲しみを消す方法を知らなかった。
焦れったいヒロイン。多分友達にいたら叱る。
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