「名前ちゃーん!どこにいるのー!って、こんなとこにいた」

縁側に腰をかけていると夏希さんが横にきて私に声をかけた。

「あ、すみません。私皆さんのお手伝い全然してないですよね。今すぐでも申し付けてください!」

「いや、そんなに気を張ることないって」

少し苦笑いをすると夏希さんは私の隣に腰かけた。

「それより、かずまはどうしたの?」

「あ、私が、怒らせちゃって」

「怒らせたって……何かあったの?」

夏希さんが心配そうな顔をして私を見る。改めて彼女は素敵だと感じた。ぱっちりした目も、サラサラな黒髪も、スッと通った鼻筋も、もちろん全て綺麗だけど、1番綺麗なのは性格だ。優しく凛々しい綺麗な人。ああ、私も夏希さんみたいなしっかりした人だったらかずまくんを怒らせずにすんだのかな。

「私が悪いんです。かずまくんが待ってろって言ってたのに、理一さんとお出かけしちゃって…」

「うんうん、それから?」

「それでかずまくんが怒ったんです」

「…は?」

「…え?」

夏希さんがキョトンとした顔で私を見る。私の話し方が悪かったのかな。そういえば、この前花子ちゃんに話す順序を決めてからしゃべりなさいって怒られたような。えっと、どうしたら伝わるんだろ。

「あの、もしかして二人って付き合ってるの?」

「な、ないですないです!仲良くなったばっかりだし」

何がどうしてか夏希さんは違う解釈をしてしまったらしい。やっぱり説明が下手くそだったんだな。横目に彼女を見ると、困ったような顔で腕を組んでいた。

「えーと、とにかく、そうね……謝れば大丈夫よ!」

夏希さんは眩しい笑顔で私の背中をぽんぽんっと押してくれた。なんだか元気でてきた。

「ありがとうございます、夏希さん!私なんだか大丈夫な気がしてきました」

夏希さんの両手を握って言うと、少し驚いた顔をしてよかったわと言った。よし、じゃあさっそく

「夏希さん!お手伝い今すぐ申し付けください!」

「名前ちゃん…」








「かずま」

「…何、理一さん」

「はは、そんなあからさまに嫌な顔するなよ」

「…べつに」

理一さんはさっきのことでちょっかいをかけにきたのだろう。ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてこちらを見ているのが何よりの証拠だ。これだから、名前を理一さんには会わせたくなかったんだ。

「お前達付き合ってんの?」

ほらきた。

「違う、べつに好きじゃないしただの友達」

理一さんは僕の顔を横から覗き込み、少し目を見開かせた。
「何」僕が短く聞くと、理一さんは苦笑しながらお前今どんな顔してるか知ってるか、と言った。どんな顔って鏡がないから分からないけど、そんなに不機嫌な顔をしているんだろうか。

「知らない」

「…かずま、すっごい寂しそうな顔してるぞ」

「はぁ!?何言ってんの」

僕が慌てて横を向けば涼しい顔して「顔真っ赤だぞ」と笑う理一さんがいた。この人絶対からかってるでしょ。

「ま、いいんじゃないの。かずまがその気持ちを殺すも生かすも自由なわけだし」

「うるさいな」

「でもお前、名前ちゃん泣かしたら許さないぞ!」

「理一さんも名前のこと気に入ってんじゃん!ロリコン!」

僕が罵倒して理一さんを見れば、だいぶ驚いた顔でこっちを見てた。もしかして、理一さん自覚なかったの?



「ロリコンか……それは、きついな……」

いい年したおっさんが何言ってんの。
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