じりじりと熱い日差しが肌を焦がす。あー、これなら日焼け止め塗ってくるんだった。今更後悔しても後の祭りってもんだけど、今年こそ美白を目指すと決めたのに、なんて仕打ちなの。

「えーと、にんじん、ぴーまん、たまねぎ、キャベツ、豆腐、豚肉、じゃがいもってどんだけ買わせる気なの」

ただでさえ暑いのに、スーパーが遠いのに。女の子一人にこれを任せる私の母はどういう神経をしているの。ぐだぐだ言ったとこでなにも変わらないのは分かっているけど、愚痴のひとつくらいこぼさないとやってらんない。

「ふぅ…」

これじゃあドラマの再放送は間に合わないなぁ。大好きな俳優さんがでていたのに。
ウィーン、と機械音がして扉が開く。冷気がぼーっとしていた頭を一気にひきしめた。よし、がんばって、早く終わらせちゃお。腕まくりしながら気合いを入れて、横にあったカゴをひっつかみ野菜コーナーへ向かった。


「重っ…」

頼まれたもの全部をカゴに入れると予想以上の重さが私を襲った。

「うぐぐ、おもいぞこのやろぉ…」

小さく呟くと後ろから誰かが吹き出したのが聞こえた。まさか、聞かれてた!?と思い振り向くと、クラスメートの池沢佳主馬くんがいた。う、嘘でしょ、そんな馬鹿な、私としたことが。

私が相当間抜けな顔をしていたのだろう。かずまくんが笑いを堪えながら「ごめん、聞いちゃった」って言った。

「あの、わ、私本心じゃないよ!お買い物大好き!だから今のは忘れて!」

「うん、いいけど」

まだ少し笑いながらかずまくんが頷いた。私は必死に話題を変えようと笑顔でかずまくんに聞いた。

「い、池沢くんもお買い物?」

「うん」

「へえ、暑い中偉いね」

「お互い様」

にやりとかずまくんが笑うと私はいたたまれない気持ちとドキドキが交錯して俯いた。そういえば、かずまくんと話したのこれが初めてだ。

「名字さんはもう帰るとこ?」

「あ、うん。あとはレジに行くだけだよ!」

「ふーん。じゃあ一緒に帰ろうよ」

あまりに自然な誘われ方に素直に頷くと、じゃあと言ってかずまくんはレジに向かって行った。わー、かずまくんって見た目からして大人っぽいけど中身も大人なんだな。私なんかドキドキして男の子誘えないよ。ぼーっとかずまくんの後ろ姿を見ているとかずまくんが振り返って不思議そうにこっちを見た。私は慌ててかずまくんにVサインを送った。馬鹿、私。動揺しすぎ。



って、あたしもレジに行かないと!

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