「か、ずまくっ、疲れっわた、文け、」
「うるさい、後少し」
息絶え絶えに話す私に比べ、かずまくんは余裕な顔をして走ってた。あれ、そいえばかずまくんって部活とかやってたっけ?なんでこんなに早いし体力あるの。これが、男と女の違いってやつなんですか。
意識朦朧としながら走っていると、かずまくんがいきなり止まった。おかげで顔面はかずまくんの背中に激突して、ちょっとした衝動事故が起こった。じ、地味に痛い。
「だっ大丈っ夫?」
必死に笑いを堪えている彼からは微塵も心配しているようには感じとれなが、そこは突っ込むとこじゃないだろうと思い「鼻が潰れてないなら大丈夫だと思う」と言った。
「うん、何も変わってない。いつも通り普通の顔だよ」
それもどうだろうか…。鼻をさすりながら辺りを見渡すと何処か庭のようだった。あれ、玄関から入らなくていいのかな。
「ほら、早く上がって」
「玄関からじゃなくていいの?」
「……そんなこと名前は気にしなくていいよ」
うん、それもそうか。ミュールを脱いで家に上がると、微妙な顔をしたかずまくんと目があった。
「え?な、何?」
かずまくんはハッとした顔をすると、ぎこちなく横を向いて「べつに」と答えた。何か、まだ距離感があるんだよなぁ。ちょっと悲しくなって俯いてると前から私を呼ぶ声がした。
「荷物置きにいくんでしょ」
「あ、ごめん」
そこで私はかずまくんに荷物を持たせたままだったことに気づいた。これを持ちながら走るって。やっぱり、かずまくんは…
「超人?」
「は?」
横に並んでいたかずまくんが素っ頓狂な声をあげる。しまった、声に出していたか。てゆーか、こういうの毎回聞かれてる気がする。
「うわ、えーと、かずまくんが力持ちだし、足が早かったから、不思議だなって」
「ああ、そういうこと」
納得したようにかずまくんが頷く。
「何か運動とかやってるの?」
かずまくんは私の顔を見て少し複雑な表情をした。あ、今ぜっっったい失礼なこと考えてたよね。 「かずまくんったらかずまくん?」顔を覗き込むと、やっぱり複雑な表情で私を見る。それから、少し考えるような仕種をして
「内緒」
ニヤッと笑うかずまくんに少しときめいたってことは勿論秘密さ!ぐえ、我が人生悔い無し。心の中で呟いていると、またかずまくんの背中に激突した。きっと私、今日は星座占い12位ね。
「荷物はここに置くよ。じゃあ、今から大おばあちゃん紹介するから」
「……戦はこれからね」
かずまくんの怪訝な顔をスルーして私は拳を前に突き出した。
タイトルを内緒にするか超人にするかで、すごく迷いました。という余談。
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