お菓子作りブーム

白宗×白猫


広い広い敷地の中からこの小さな猫を探すのは一苦労だった

「チカーどこだ?」

出ておいで帰ってきたよとチカを抱き締めたいのに、家が広すぎてどこにいるのかさっぱりだ

「シロムネ!オカエリ!」

「ピーチャン、ただいま、チカ見なかったか?」

「チカ?チカハネ、サンガイノネケロチャントコイタヨ」

ピーチャン、ネーミングはチカが考えた、いや、昔は格好いい名前があったんだがな、チカがそう呼ぶから

三階の一番奥の部屋
ケロちゃんと呼ばれるケロベロスはとても凶暴だ
部屋から泣き声が聞こえてドアを蹴破った

「やぁーやめてよぉ」

「チカ!……Ah?」

チカは泣いていたのではなく、
いや泣いていたのだが

「ふわーんくすぐったいよぉ」

ケロベロスの下で笑いながら涙を流し、
頬がケロベロスの唾液で濡れていた

「あっ政宗ぇーわんちゃんがペロペロしてきてねぇ」

「あ…あぁ…」

動物だから分かり合えたりするのか
いつもは俺にだって噛みついてくるのに

「とりあえずケロ、チカから離れろ」

グルルと威嚇をするケロベロスにチカが笑った

「チカ、白宗のところに行きたいなぁ」

そういうと大人しくチカの上から退く
アンタの主人は俺だぞ

「白宗!」

ぴょんと白宗の胸に飛んできたチカを優しく受け止めて部屋を出た

「白宗は今日なにしたの?」

「Ahそうだな、写真撮影とかかな、」

「テレビの撮影はしないの?」

「テレビはなぁ…明日くらいに入ってたな」

「すごいねぇ」

によと笑うチカが可愛くて仕方がない
そのマシュマロのような頬にキスをすると真っ赤なリンゴのように顔が紅くなるチカ
本当に可愛い
今人気の天才子役よりもうんと可愛い

「チカ、今日ね、こじゅうろぉとクッキー作ったの!」

「へぇ、上手に作れたか?」

そう聞くとうんと答えて白いワンピースのポケットから包装袋を出した

「あ、」

ちいさな手の中のものを見せて泣き出した

「わ、れちゃ、た」

きっとさっきケロベロスとじゃれて踏まれたんだ

「Oh…」

「頑張って作ったのにぃ…」

ぐすんと鼻を鳴らしながら涙を大きな目からボタボタと落とすから親指で優しく拭いてあげた

「チカ、頂戴?」

と手を差し出す白宗
しかしチカは首を振って渡さない

「チカのクッキー食べたいなぁ」

「だって、割れ、ちゃった、もん」

そんなもの白宗にあげれないと頑なに拒否する

「俺の為に頑張って作ったんだろ?
割れてたっていいんだよ、そのクッキー俺にくれねぇなら
チカを食べちゃうぜ?」

更にチカを抱き寄せ頬を唇を添えてあぐあぐする

「いやぁー白宗ぇあげるっあげゆから!許してチカ食べちゃいやぁ」

「ふ、Thank you、チカ」

ちゅっと小さな唇を吸って
いつの間にか着いていた自室のベッドにチカを座らせる
白宗もその隣に座ってクッキーを包んでいるラッピングをとく

「ホントはうさぎさんとか形があったんだよ」

「型抜き使ったのか、頭良いなぁ」

と頭を撫でるとによと笑う

「んじゃ、頂くぜ?チカ」

と、割れた中の一番大きい欠片を口に入れる
さすが、小十郎と作っただけある普通においしい
だが少しぼそぼそと言うか粉っぽかった
あぁ、小麦粉そのまま入れたな?などと思うも初めてにしては上出来である

「It delicious、とてもおいしい」

「ホント?よかった…」

ホッとした表情をみて白宗は笑った

「今度一緒にお菓子作るか?ケーキとかシュークリームとか」

「ん、うん!つくりたい!」

と今日一番の笑顔を見せてくれた



お菓子作りブーム



(100819)


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