「にいちゃん、一つ聞きたいことあるんだけど」

「…なんだ」

「ねえちゃんに、ちゃんと教育してんの?」

「何の話…」


アーウィンは読んでいた本から目を離し、声のした方へと視線を移した瞬間、言葉を失った。
声の主であるフレディの先に、湖ではしゃぐレナの姿。
水辺で遊ぶものだから、白いワンピースは水を含んで肌の色を映しているではないか。
いくら肌が白いとはいえ、それでもピタリと張り付けば艶かしいことこの上ない。
全身濡れでもしたら、下着までが透けてしまうだろう。


「…にいちゃん変なこと考えてないよね?」

「それはお前だろう」


ぴしゃりと言い放ち、レナを止めるべく木陰から立ち上がる。

「ねえちゃんってさ」

「?」

「良い時期に成長が止まったよね。中身は成長していくんだろうけど、一番純粋で誰しもが戻りたいと思う時期だよ」

「…………」

「見た目も一番良い時期かも。可愛いし、抱き締めやすいし。え、それも計算だったりすんの?」

フレディの問いに、馬鹿かと答えようとした時、湖から盛大な水音が響いた。


「あーあ、やっちゃった」

「…まったく、仕方のない人だ」


それでもレナは笑いながら、水辺で二人の名前を呼んだ。
ワンピースの裾を絞れば、大量の滴が落ちる。
脱いでいた靴の場所まで歩く間にも、その白い足を流れ落ちる水滴や、透けているラインに男二人は見入ってしまう。
互いに一瞬視線を合わせ、何も言わずとも理解した。


「ごめんなさい、アーウィン。…今日は怒らないのね?」

「怒りを通り越して呆れているんです。さぁ、早く帰りますよ」

「そうそう、これでも着てなよ」

「え?ありがとう…なんだか二人仲良しね」

フレディが着ていた上着を借りながら、レナは不思議そうに二人を見比べた。


(一時休戦だね、にいちゃん)
(一時休戦ですね)



とても彼女が愛しくて


叶うなら、今すぐ押し倒したいのが本音


でも、そんなこと今は無理だから


他の誰かにその姿だけは見られないように


早く二人で隠してしまおう。