レナは央魔となった。
私の望み通りに。

けれど彼女は血で支配することを拒み、未だに私と共にある。

それが、

どういうことなのか知らずに。





「レナ、もう眠いのではないですか?」

「ん、もう少し…」

そろそろ陽が昇る頃、レナは読んでいた古文書から顔を上げて目を擦った。

「無理は禁物です。私たちには時間が有り余る程あるのですから」

「そう、よね。わかったわ」

素直に本を閉じて、いつものネグリジェをふわりと揺らし、ベッドへと潜り込んだ。
ギシリと軋むベッドへ腰掛け、彼女の頭を撫でてやる。
ゆっくりゆっくり、瞼が閉じかけていくが、寸でのところで「アーウィン」と名を呼ばれた。

「やっぱり、ダメみたい」

「…そうですか。今だけ、ですよ?」

「ん、分かってるわ…もっと大人になったら、ちゃんと一人で寝るから」

今にも閉じそうな瞳で、幼い子供のように両手を差し出す。
その腕に誘われるように、私も彼女を抱き締めて、ベッドの中へ入り込んだ。

あの時から、レナは一緒に寝て欲しいとせがむようになり、まるで互いの冷たい肌を確かめ合うかのように、抱き合って夜が来るのを待っている。


「…アー、ウィン」


何の夢を見ているのだろう。
毎夜、吐息混じりに呼ばれる名が、私の身体を震わせた。

そして毎夜思うのだ。

この小さな身体を、いつ貫いてやろうかと。

熱さを失った身体は、きっと痛みと快感しかもたらさないだろう。


そして後悔すればいい。



私を


その血で


縛っておかなかったことを。