CALLING!!


今日は記念すべき、神田の誕生日。
なのに、主役の本人は急な任務が入って留守してる。
あんなに誕生日は二人で過ごそうって約束したのに…。
いや、今は凄く大事な時期だし、それがイノセンスに関わる仕事となれば、仕方のないこと。それは頭では、よく分かってはいるのだけれど。
それでも、やっぱり僕は神田に逢いたくて。せめて、その声でも聴きたいと想ってしまう。

今、神田はどうしているんだろう?
何をしているんだろう?

こんな淋しがり屋で我が儘な僕のことを、ほんのちょっとでも思い出してくれたらいいのに…――なんて。
彼が僕に対して、そんなことを思うはずないって、わかっているはずなのに、こうやって強く願ってしまうのは、相当、彼に依存しているのかもしれないな。

そんな自分に思わず苦笑いを浮かべていると、不意に部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。

「…アレン君、居る?」

この声は、リナリー。
任務でも入ったのかもしれない。そう思って、急いで駆け寄り、扉を開けた。

「リナリー、どうかしましたか?もしかして、任務?」
「いいえ、そうじゃないの」
「では、どういう…」
「実はアレン君宛てに電話が入って、呼びに来たの」
「僕宛てに電話…ですか?」

一体、誰だろう、と首を傾げてしまう。

「その相手、余り気が長い方じゃないから、急いだ方が良いわよ」
「…っ」

リナリーの言葉にハッとして、気付いた時には部屋を飛び出していた。

そんなことある訳ない、と思いながら、そうであって欲しいと願う。
こんなことする人じゃないって、分かっているけど、願ってしまう僕が居る。

全力疾走で、階段を廊下を駆け抜け、辿り着いたのは、指令室。

「やぁ、アレン君。電話の主がお待ちかねだよ」

高鳴る胸を抑えながら、弾む息を整えながら、コムイさんから受話器を受け取り、徐に耳に押し当てる。

「…HELLO HELLO」
「…ったく、相変わらずのノロマだな、お前は」

受話器から響いたのは、僅かに飽きれた様子の、愛しい人の声だった。


FIN


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