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「…ったく、此処に居たのかよ、バカモヤシ」

突然背後から声を掛けられて、振り向いてみると。
そこには見慣れた、あの無愛想な瞳があった――。


――12月25日…。


それは、イエス・キリストの生まれた日であり
実の親に捨てられた日であり
マナに拾われた日でもある。

実の所、僕は本当の誕生日を知らない。
自分のことなのに情けないけど、はっきりした年齢も解らない。

遠い遠い昔に刻まれた記憶は、既に闇の深淵に堕ちてしまった。
僕は実親の名前は疎か、顔さえ覚えてはいない。

だけど、今となっては、知る必要もないし、知りたいとも思わない。
寧ろ、それで良かった。

だって僕には、親に捨てられたという悲しい出来事より、マナと過ごした時間の方が何より強くて、何事にも代え難い大切な宝物なんだから…。

だから、マナが手を差し延べてくれたあの日が、僕の誕生日。
それが、僕の始まりで。
それが僕の、ホント。

クリスマスは、マナのことを1番に想起する。
最愛の人との、あの至福の時を…。
忘れ得ぬ、僕の大事な想い出の日。


――そして今年も、トナカイの鈴の音と共に、その日がやって来る。


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