million star 3


本当、この人はつくづく不思議な人間だと思った。
僕の気持ちを汲み取り、知らぬ間に中和してしまうのだから。
勿論、お節介で終わってしまうことの方が断然多いのだけど。

「…どうしてこんな場所を知っていたんですか?」

僕の問い掛けに、おじさんはくすりと笑った。

「まぁ、それは企業秘密だ」
「企業秘密…って。教えてくれないんですか?」
「少し秘密めいた部分があった方が、ダンディでカッコイイだろう?」
「ダンディ、カッコイイ…。貴方に1番不釣り合いな言葉ですね」
「相変わらず、酷ェな、バニーちゃんは」
「でも…」

これだけは伝えないと、と思い、改めておじさんの方へと向き直る。

「…今日は、ありがとうございました。実はちょっと苛々してて、自分では中々、払拭しきれなくて…。だから、貴方にこの場所に連れて来て貰えて、本当に良かった」
「……?」

意外だとでも言い気な表情で、おじさんがまじまじと見つめてくる。

「な、何ですか?…何か僕、変なこと言いました?」
「いや…。何つーか、お前、いつもツンツンしてる訳じゃないんだ、と思ってな」
「し、失礼な…っ。僕だって素直な時ぐらい、ありますよっ」

人を何だと思ってるんだ、この人は…っ。

「すまん、すまん」
「…まったく」
「…だが、お前は、怒ってる顔より、微笑んでる顔の方がよく似合うよ。いつも笑ってろよ、バーナビー」
「な…っ!?」

思い掛けぬ相手の言葉に、一気に体中の温度が上昇したのが分かった。

「いきなり、何を…」
「…あはは、もしかして、照れた?ドキッとした?」
「へ?」
「冗談だよ、冗談。お前、この手には、よく引っ掛かるよな?」
「あ、貴方って人は…っ。もう、怒った」
「ちょ、バニーちゃん?顔が怖いんですけど…っ」
「問答無用です!!」


ヒーローとして生きるという、茨の道を選んだ、僕。
これからもその宿命は、容赦なく僕を追い立てるだろう。
それでも僕は、何事にも臆することなく進み続ける。
一緒に立ち向かってくれる、パートナーに巡り会えたから、もう何も怖いものなんてない。


 million star

「また二人で来ような、バニーちゃん」
「貴方とはもう二度と来ませんから」
「ひど…っ」

 (20110731)


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