それは余りにも自然に告げられた。
放課後、学園の校舎の屋上で。まるで、『あの空の色が好き』とか『あの本が好き』とか。そういうのと同じように、とにかく自然で…。だから僕は、少なからず面食らってしまった。

「…そう、なんだ」

いつもの調子とは違う感じで言われたせいか、僕もつられるように静かな口調になる。内心、こんなにも驚いているというのに、不思議と穏やかな声が出るなんて、自分自身にも驚いてしまう。

「……何か、変だな」

思わず呟くと、兄さんは怪訝な表情でこちらを見返してくる。

「変……って、俺がか?」
「あ、いや、兄さんが変だっていう意味じゃなくて…。だって兄さんは、そういう恋愛とかに全く興味がないものだと思っていたから」
「……特に好きな人が居なかっただけだよ、今まではな。それに、人をそういう特別な眼で見たことがなかったから…」
「それで、相手は誰なの?僕の知ってる人?」
「…あぁ、しえみ」
「……えっ、しえみさんって、あの…、し、えみさんのこと?」
「あぁ、そうだ。他に誰がいるよ」

意外にもあっさりと返答してくる、兄さん。
冷静に考えてみれば、それはとても自然で。そうなって当たり前のようにも思えた。
自分以外の人間で最も親しく、最も長く兄と一緒に居るのが、しえみさんだったからだ。
だけど、頭では理解出来ても、心の何処かでは受け入れられない自分が存在する。

「…変か?」
「変というか…」
「じゃあ、何だよ?納得出来ないって顔、お前、さっきからしてるじゃねェか」
「……別に納得出来ないって訳じゃないけど。でも、兄さん、自分の立場、ちゃんと分かってるの?」
「俺の立場?」
「そうだよ。兄さんは魔神の落胤で、あらゆる者からその命、存在を狙われてるって…」
「…分かってるさ、そんぐらい。勿論、が忌み嫌われた存在であることもな。だが、前は悪魔である俺が、人間のしえみを好きになっちゃいけねェ、って言いたいのか?」
「別にそこまでは言っていなけど…」

言って、僕は言葉を濁す。
それでもやはり、正直なところ、歓迎は出来ない。
悪魔と人間の恋なんて、前代未聞だ。

「……そんなに、しえみさんのことが好きなの?」


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