かなり早く任務を終わらせたつもりだ。なのにやはり柱間の方が先に帰ったと聞き、マダラとしては面白くはなかった。心づもりをする暇さえない。今、マダラは柱間の自室の前に立っていた。
 今夜は任務の報告があるし、他にも話し合いたいことがあるから、遅くなる。マダラからの言葉を聞いたヒカクは僅かに目を細めたあとに、言った。でしたらいっそ泊まらせていただいたらどうでしょうか?マダラは目を僅かに瞠った後に気まずそうに視線を逸らした。ヒカクは何をどこまで感じ取っているのか。そしてなぜ止めないのか。直接聞くことはマダラにはできない。
 任務から帰って自室にも寄らず真っ直ぐにここまで来たはいいものの、なかなか目の前の襖を開くことが出来ない。マダラが途方に暮れていると、スッとその襖が開いて柱間が顔を出した。

「おお、マダラ!帰ったか!」
「……ああ」

 腹が決まった。柱間はきっと随分前から部屋の前にマダラがいることに気づいていたはずだ。知っていてマダラは柱間が我慢を切らして出てくるのを待っていた。いつも何も考えずに入っていた柱間の部屋に踏み込むのが戸惑われる。なにか、空気が違う。気のせいにしろなんにしろ、マダラは自分が緊張していることだけはわかった。

「入ってくれ」
「おう。……お前、いつ帰ってきたんだ?」

 促されるままマダラは部屋へ入り、腰を下ろした。目を合わせることが出来ず、同じく前に腰を下ろした柱間に当たり障りのない話題を振る。

「今朝方な。お前とあまり変わらんぞ。早かったな」
「……イヤミにしか聞こえねー」

 緊張感を内包したまま、少しずついつもの調子が戻ってきた。一つ息を吐きだしてマダラは目の前の柱間に視線を向ける。

「どうだった?」
「いつも通りだ。……ほらよ、これが誓約書だ」
「ああ……ご苦労だったな、ゆっくりと身体を休めてくれ」

 かけられた言葉を聞いてマダラはじっと動かず柱間を見つめた。柱間も黙ってしまいマダラを見つめ返した。ほんの数秒、間が開いたあと柱間が少しだけ視線を逸らす。

「……違うな」
「……違うだろ」
「間違えた」
「バカか」
「……返す言葉もないぞ……」
「落ち込んでんじゃねーよ」

 先程までのいつもと変わらなさすぎる柱間が崩れたのを見て、マダラは僅かに安心した。緊張していたのは自分一人では無かったのだ。落ち込む柱間を見て、マダラは漸くほんの少し笑みを浮かべた。

「この場合は休ませないと言ったほうが正しかったか」
「……寝かせない気か」
「マダラがそれで良いなら!」
「誰がいいっつった?本当にお前は、…!」

 完全にいつもの空気に戻る一歩手前で、柱間が動いた。手を伸ばして、あの夜のようにそっとマダラの右目を隠す前髪を払う。止まってしまったマダラをじっと見つめながら、柱間は顔を寄せようとした。マダラは反射的に仰け反り、その上へ覆いかぶさるように柱間が迫る。腰を下ろしたままで逃げる態勢が整わず、苦し紛れに柱間の口元を塞ぐように手のひらで顔を押し返した。

「……」
「……」
「……嫌ぞ?」
「ちょ…っ、と、待て」
「……待てぬ」
「…っ!」

 柱間は目を細めて口を塞ぐマダラの手をとった。手袋をはめたままの腕に、そっと口付けが落とされる。ぞくり、マダラの背筋を何かが這い上がった。
 マダラは、忘れていたのだ。手袋をはずしたばかりの手が、いかに刺激に対して敏感なのか。
 柱間がそっと手袋の指先を齧り、引いていく。ゆっくりと手から抜けようとするそれに、焦ったマダラは柱間の髪を掴んで思い切り引っ張った。

「いたたたたたたマダラ痛い!痛いぞ!」
「待てっつってんだろ!……っ、ふ、風呂入ってからじゃねぇと嫌だ!帰ってきたばっかりだから先に血とか汗とか流させろ!」

 自室に寄らずに真っ直ぐ来たために風呂に入ってくるのを忘れたのは本当だが、実際は手袋を外してから手のひらや指先がいつもの感覚に戻るための時間を稼ごうというのが本音だ。暫し柱間が動きを止める。マダラもいつの間にか激しく脈打っている心臓の鼓動を感じつつ柱間の様子を伺った。

「……仕方ないな」
「……だろ」

 少し身体を引いた柱間に、マダラは小さく息を吐きだして僅かに笑みを浮かべた。だが、掴まれたままの手首は離されない。疑問を感じて眉を顰めるとまた柱間をじっと見つめる。柱間が、ニヤ、と嫌な笑みを浮かべるのが見えた。

「一緒に風呂に入ろうぞ」
「……はっ?」

 混乱したマダラを引っ張って立たせて、柱間は自室のそばにある自分のための湯殿へ向かう。状況を理解したマダラは踏ん張って逃げようとするものの板の間の床は滑りやすくずるずると引きずられていく。

「なんで一緒に入る必要が……!」
「恥ずかしいのか?」
「…っ」

 恥ずかしい。それも間違いではない。マダラは自分の顔に熱が一気に集中するのがわかった。

「どうせ脱ぐから変わらんぞ!」
「……」
「脱がせても良いか?」
「っ、自分でやる!」

 とうとう風呂場まで連れてこられて服に手を掛けられてマダラは思わず手を払いのける。思い切り柱間に背を向けてしまったものの立ち去ることはしないマダラの様子を見て柱間が笑みを深めたことにも気付かない。ひとつ、大きく息を吐き出してマダラはゆっくりと服を脱いでいく。元々白い肌がやわらかい明かりの元に晒された。自分の帯を解きつつ、柱間は目に焼き付けるようにゆっくりとその姿を見つめる。

「……見てんじゃねーよ」

 すべての衣服を取り去り、柱間の視線に居心地の悪さを感じるとマダラは振り返って柱間をまっすぐ見つめた。しかし、柱間の逞しい身体が見えていたたまれず視線をそらす。柱間はというと、マダラの一糸纏わぬ姿に思わず見惚れた。そうして固まってしまった柱間にマダラはまたじわりと赤くなると、柱間に近寄ってその髪を力一杯引っ張った。

「いたたたたたたた」
「見てんじゃねぇっつってんだろ聞こえねーのかお前はァ!?」
「わ、悪かった!あんまり綺麗だったから、つい……」
「……っ、ふざけるな、どこが綺麗だ」

 柱間によって付けられた傷痕があちこちにある身体を見下ろしてマダラは溜息を吐く。柱間の髪から手を離してまた背をむけるとそのまま風呂場に入った。髪紐で長い髪が邪魔にならないように適当に纏め上げる。顕になる項や背にまたしても見惚れつつ柱間も風呂場に入った。

「さっさと済ませるぞ」

 さっとかけ湯をして早速身体を洗い始めようとしたマダラの手を、柱間が掴んだ。敏感な手のひらに触れられて思わすびくっと肩を揺らし、マダラが柱間を睨む。

「……どういうつもりだ」
「身体を洗ってやろう」
「は…っ?待て、いらん!」
「遠慮するな」
「……」
「……」

 お互いを睨みつけたまま、手を引こうとするマダラと掴んで離さない柱間。暫しそのまま静止していたものの、最終的にはやはりマダラが折れた。何分柱間の方が強いため、粘っても仕方がないとわかっている。本当にマダラが嫌がることは柱間はしないだろう。結局はそこまで嫌でもないということが大きな理由だった。好いた相手だ、仕方がない。

「……変なことはするなよ」
「普通に洗うだけだ、安心しろ」

 手の力を抜いたマダラに柱間が嬉しそうな顔をする。早速石鹸を手に取り、丁寧に泡立て初めた。マダラは呆れたようにその姿を見つめた。なんとその姿の楽しそうなことか。

「よし、背中からでよいか?」
「ああ」

 柱間の言葉に頷いてマダラは背を向けた。ここまで無防備に他人に背を晒すのは初めてかもしれないと少し緊張する。柱間も緊張していた。石鹸を纏った手を、白い肌に伸ばす。そっと、手のひらが背を滑った。

「…っ」

 普通に洗っているだけ、それだけだ。わかっていてもマダラはフルリと小さく身体を震わせた。肌に直接人が触れるのはいつぶりだろうか。そして、いつしか髪に守られている背は敏感になっていたようだ。
 気取られない様にと歯を食いしばって耐えるマダラに、柱間はすぐに気付いた。自分の手に敏感に反応する様を見て喜ばないわけがない。小さな反応一つ一つを楽しみながらマダラの背にゆっくりと手のひらを這わせて丁寧に洗っていく。

「マダラ……気持ちいいか?」
「……っ」

 歯を食いしばったまま何とも言えないぞくぞくとした感覚に耐えるマダラは声を発することができず、意地を張ってフルフルと小さく首を振った。纏めた毛先がそれに従ってゆらゆらと揺れる。柱間にすれば愛らしくも見えるその様子に思わず頬が緩む。背をひと通り洗い終わると、柱間はそのまま脇腹から綺麗に筋肉のついた腹へと手のひらを這わせて、後ろから抱きしめるように引き寄せた。

「っおい!」
「次は腹と胸ぞ」

 身を捩って柱間の方を振り返ろうとしたマダラの顔を横から覗き込み、柱間が笑う。目があった瞬間、お互いに背から項のあたりがぞくりとした。柱間はマダラの僅かに濡れた瞳に、マダラは柱間の男臭い熱を孕んだ眼差しに、どうしようもなく欲情した。耐え切れずマダラが目を閉じると、柱間はまた柔らかく笑ってゆっくりと手のひらを腹に滑らせる。抱きしめて身体が密着したことで小さな震えが柱間に伝わるようになった。なんとか身体が反応するのを抑えられないかとマダラは軽く唇を噛むものの、収まるはずもない。腹から胸へと柱間の手が這い上がってくると、どくどくと心臓が脈打って熱を上げるために身体が酸素を欲しがる。堪え切れずはぁ、と小さく漏れた吐息はマダラ自らが驚くほど甘さを含んでいた。
 ふと、柱間の手が胸の突起に触れて、マダラはほんの少し背を反らした。好いた相手が与える刺激に身体はどこまでも敏感だ。とうとう耐え切れず胸元を這う手を止めさせようとマダラは柱間の手首を掴んだ。

「っ、はし、らま…っ」
「どうした?」
「ん……っ」

 マダラが僅かに後ろを振り返ってなにか言いたげに柱間を見つめる。しかし柱間は優しく問いかけつつも手を止めることはしない。満遍なく胸元を手のひらが滑っていく。その手に与えられる感覚からなんとか逃れようといやいやと首を振ってマダラが身を捩り、掴んだ柱間の腕に僅かに爪を立てた。一度名前を呼んだきりそれ以上は言葉を発せず口を閉じ、刺激が止むのをただ待つ。

「マダラ、大丈夫か?」
「ふ……っ」

 漸く手が止まるとマダラは小さく吐息を漏らして小さく頷く。柱間の腕を掴んでいた手から力が抜けた。背で柱間にくたりと凭れ掛かる。
 恥ずかしさには段々慣れてきた。柱間に触れられるのが心地良い。マダラは気怠げに僅か振り返って柱間を見る。目が合うと照れたようにゆっくりと目を閉じたものの、そのまま柱間に頭を寄せてすり、とほんの少しだけ甘えるように擦り寄った。言葉はないもののその仕草で最大限の愛情を示されて、柱間は湧き上がってきた幸福感に笑みを深めるとそっと唇にキスをする。数秒触れ合って唇が離れると、マダラはまたゆっくりと目を開いて柱間を見つめ、満足げに仄かな笑みを浮かべた。……堪らなかった。

「マダラ、……もっとお前に触れていいか?」
「……だめっつったらどうするんだ」
「それでも触るぞ」
「じゃあ聞くな……」

 ふい、とマダラが顔を逸らしてしまう。また素っ気無くなった様子に笑って、柱間はふとマダラの手を取る。ひくり、肩が震えた。

「なぁマダラ、さっきから思っていたんだが、もしかして手が弱いのか?」
「……」

 マダラは顔を逸らしたまま答えない。言い訳しようがもう知られてしまっていると分かったからどうしようもない。石鹸を纏った指がぬるり、と優しく絡んだ。敏感な手のひらや指の間に触れてくる柱間の指にぞくぞくして手を逃がそうとするものの優しく絡みついて離れない。

「こんなに敏感なら手を繋ぐのも一苦労だな」
「っ、手、繋がねぇ…っ、し…」
「それは寂しいぞ」

 逞しい指がぬるぬると自分の指に絡みついてくる様子をマダラはじっと見ながら乱れてくる吐息を抑えようとする。しかし抑え切れず漏れる吐息は小さく震えていた。
 ふと、耳に吐息を感じてマダラは今度こそびくん、と大きな反応を返した。手だけに集中してしまっていたため驚きと混乱でどうしていいかわからなくなっているマダラの赤い耳に柱間はそっと口付けて、唇で柔らかい耳朶を食む。

「ゃ、…っ」

 やめろ、と言えず小さく喘ぐような声が漏れた。身体を捩って逃げようとするがしっかり抱きしめられていて逃げようがない。わかりやすく反応するマダラに柱間は楽しげに目を細め、耳に優しく舌を這わせていく。手と耳に与えられ続ける刺激に、暫くすると抵抗する力が抜けていった。柱間に身体を預けて必死に漏れそうになる声を耐え、時折ひくりと身体が震える。そうして十分にマダラの力が抜けて満足すると、柱間は優しく耳の後ろにキスをしながら手を苛めるのをやめてゆっくりと腕の方へ手を滑らせて洗っていった。
 抵抗のなくなった上半身の洗えていない部分を洗ってしまうと、再び腹に手を這わせていく。今度はゆっくりと下腹部へ下りていく柱間の手を、マダラは気怠げに開いた目でじっと見つめた。もう乱れた吐息を隠すこともしない。どうしようもなく期待してしまっている。しかし、意地の悪い柱間の手は際どいところをそっとなぞってマダラが震えるのを楽しんでからそのまま滑らかな足の方へと辿って洗っていく。思わずマダラは眉を寄せた。

「っ、は、…っばか、やろー…っ、が」
「ちょっと待て、いっそ洗ってしまうから」
「だったら、…っふ、…さっさと、しろ……っ」

 この罵倒も今の柱間にとっては悪い気はしない。早く欲しいと言われているも同然だ。それでも丁寧にマダラの足に泡を纏わせて、足先まで洗い上げる。敏感になったマダラは唇を軽く噛みつつもそれを堪えた。また徐々に足先から手が這い上がってくる。内腿まで来た時、ふとマダラが柱間の手首をそっと掴んだ。

「……どうした?」
「…っ……さっきから、当たってる……」

 横顔を覗き込むようにして問い掛けた柱間に、マダラは小さく答えた。そうだ、腰に柱間の熱の塊が当たっているのが気になっていた。それはマダラにとっては柔らかくも丸みもない男の自分の身体で柱間が欲情している証拠であり、嬉しくもあった。身体にゆっくり力を込めると後ろを振り返って柱間をじっと見つめる。気怠げに持ち上げられた手が、そっと柱間の逞しい胸板に当てられた。

「……オレも、一緒にしてやろうか」
「……!……良いのか?」

 正面同士でじっと見つめ合いながらマダラが発した言葉に、柱間が驚いて目を瞠った。驚きのままに問いかけると、マダラの口元がゆるり、弧を描く。

「イヤって言えと?」
「いやいやいやいや是非頼むぞ!」
「最初からそう言え」

 おかしげに笑ってそう言ったマダラだったが、視線をゆっくりと下に降ろして僅かに息を呑んだ。自分に欲情して熱を主張する柱間の自身は、標準的な大きさである自分のものと比べて随分と大きかったのだ。

「でけェ……」
「そうか?」

 この大きなものが自分の中に入ってくるのかと考えて不安を覚えるものの、咥内に溜まった唾液を飲み込んでマダラはそっと柱間のものに触れた。びく、と小さく脈打ったのを感じて手を引きそうになるものの、堪えて恐る恐るといった様子で触れていく。たまらなく熱かった。
 柱間も、自分のものに愛しい相手が触れているというだけで、視覚的にも感覚的にも心地良さを感じていた。柔らかく目を細めてそっとマダラの腰を引き寄せると、マダラのものに触れていく。先程までにじわじわと緩い快楽を与えられて高められていたマダラは、やっと与えられた直接的な刺激に身動ぐと、顔を見られないようにと柱間に身体を寄せて首元に顔を埋めて隠してしまった。そのままゆっくりと手を動かしてお互いを高めあっていく。じわじわと腰元から這い上がってくる痺れに、柱間の息が乱れていった。マダラはそれにより柱間が自分の手により感じていることを知って嬉しくなる。柱間が気持ちよくなるようにと同じ男だからこそ分かる括れや先の割れ目などの良い部分を指先でなぞり、優しく手を動かし続けた。

「…っ、……マダラ」
「ん、…っ、は、っ、なんだ……?」

 ふと柱間がマダラの名を呼んだ。耳元で聞こえた声にひくりと肩を震わせ、マダラがゆっくり顔を上げて柱間の顔を見る。その表情は明らかに欲を含んでいて、柱間は柔らかく目を細めて笑うと空いた手でそっとマダラの首筋を撫でて唇を重ねた。マダラの手が、止まる。濡れたような艶やかな黒い瞳がゆっくりと閉じられた。
 二度目のキスだ。ゆるゆると慣れない柔らかい唇の感触を楽しむように、そっと唇が押し付けられる。マダラはじっとして動かない。数度優しく啄んで愛情を注ぎ、柱間は反応を見るようにマダラの唇をぺろりと舐めた。マダラはほんの少し顎を引いたものの、そっと誘うように唇を開いて柱間の舌を受け入れる。口づけが、深くなる。マダラの口内は熱く、柔らかかった。項へ手を回し頭を引き寄せて、舌でゆっくりと中をなぞる。その間にも敏感な自身を扱かれ続けて、上顎や歯列をなぞられ、マダラはぼんやりとしながら快楽に浸る。今まで生理的に受け付けず誰ともしたことがなかった初めての深いキスは、愛しい相手とならどうしようもなく気持ちが良かった。何も考えられないまま必死に自分からも舌を絡めて応えつつ時が過ぎ、ゆっくりと唇が離される。

「ふ、…ぁ、…あ……っ」

 キスで塞がれていた甘さを含んだ控え目な喘ぎ声が漏れる。もう力が抜けてしまって声を抑えることもしない。柱間はその声に更に興奮すると緩く笑みを浮かべた。

「マダラ…、手が、止まっているぞ」

 小さく声を掛けるとぐっとマダラの腰を引き寄せる。お互いのものをひとまとめにしてマダラに握らせると、その上に自分の手を重ねて少しずつ早く手を動かし始めた。

「あっ、…っ、ぁ、」

 お互いの欲が擦れ合ういやらしい光景から目が離せず、マダラは小さく声を漏らしつつされるがままに手を動かし続ける。手のひらで感じるものは敏感に脈打って熱く、とろとろと先走りの蜜を零して卑猥な水音が立つ。限界が近かった。それを察して柱間は手を早めていく。

「あ、…っ、ぁ、ん、…っ、んー…ッ」
「っ、…ッく」

 先に達したのはマダラだった。びくんと身体を震わせて強い快楽に耐えようと柱間の肩に噛み付く。その痛みに心地良ささえ感じながら、柱間も後を追うように熱を放った。最後まで出し切るように自身を扱き上げ、続く強過ぎる快楽にマダラが嫌がるように首を振った。

「ん、ん…っは、…っ、ぁ……」
「ふー……、マダラ……大丈夫か?」

 柱間はゆっくりと息を吐き出して整えつつ力が抜けてもたれかかってきたマダラの顔を覗き込む。疲れたように目を閉じたままのマダラが言葉を発せず小さく頷いた。柱間はその上気した頬にそっと口付けると、優しく湯で身体の泡を流してやり、マダラの髪紐を解いた。長い髪が白い肌を隠すようにはらりと垂れる。

「髪を洗うぞ」
「……、お前は、身体……」
「もうオレは風呂に入ったからな」

 優しくマダラを抱いたまま髪をぬらしつつ発した柱間の言葉に、マダラがゆっくりと目を開いて柱間を睨む。

「……一緒に入る意味ねェ……」
「はは、そう言うな。お前を洗ってやりたかった」

 悪びれもせず返す柱間に、諦めた様にマダラは目を閉じた。大人しくなったマダラの髪を丁寧に洗っていく。大人になるにつれて長くなったこの髪に存分に触れるのは柱間にとって初めてのことだ。戦場からの帰りで多少の砂埃などで汚れた髪を労るように丁寧に扱う。マダラはやはり他人にあまり触れさせたことのない髪に触れられるくすぐったさに時折身動ぎつつも、快楽の後のだるさと相まって心地よく感じ、柱間の好きにさせた。
 やがて髪を洗い終わると丁寧に流してから柱間はマダラを抱えあげて一緒に湯船に浸かった。マダラが暴れるかと柱間は考えたが、そのようなことはなかった。マダラは、疲れていたのだ。温かい湯に浸かりつつ、柱間はマダラの髪や頬を撫で、顔のあちこちに優しく愛情を注ぐようにキスを落とす。マダラは何も喋らず疲れのあまりそのまま眠ってしまったが、柱間は満たされていた。





 翌朝、マダラは柱間の腕の中で目を覚ました。僅かに肌寒い。服を身につけていなかった。目の前で眠っている柱間の肌に寝起きの無意識で身体を寄せて暖を取る。無防備に眠る目の前の男の顔をぼんやりと見つめて昨夜の事を思い出した。とても満たされたのを覚えている。マダラは、ほんの僅か笑みを浮かべると柱間の唇に軽く口付け、ゆっくりと身体を起こした。

「ん……、マダラ……?」
「!」

 マダラはそのまま寝台から抜け出そうとしたものの、ふと名前を呼ばれて逞しい腕が腰元に絡む。マダラが見下ろすと、寝起きの柱間と目があった。柱間が柔らかく微笑むと、手を伸ばしてマダラの前髪をそっと払う。もうマダラにも分かった。これはキスをする合図だ。そのまま柱間の手がマダラの後頭部に回り、頭を引き寄せる。だが、マダラは許さなかった。

「いっ、いたたたたたたたマダラ痛い痛い!」
「朝だぞ、千手の頭領」

 マダラは柱間の鼻を思い切りつまんで引っ張りながら冷たくそう言い放った。柱間の手が頭から離れたのを確認して離してやる。柱間は鼻を手のひらで覆って容赦なく与えられた痛みに堪えた。その様子にマダラは満足げに笑みを浮かべると、そっと柱間の髪を撫でて額に口付けを落とす。

「……!」
「オレはもう戻る。ヒカクが心配するからな。お前も仕度しろ。扉間が来る」

 マダラは寝台から降りてそばに置かれていた自分の衣服を身につけていきながら柱間に声をかけた。マダラからのキスを受けて驚いていた柱間もゆっくりと身体を起こして伸びをする。

「つまらんぞ……一日中寝てたい」
「怠けたことを言うな。仕事は山積みだろう」

 冷たく切り返しつつ手早く身支度を整えたマダラは振り返り柱間を見つめる。もう昨夜の乱れた様子はどこにもない。それを残念に感じつつも柱間は柔らかく笑みを浮かべた。

「仕方ないな。一日頑張って今夜は酒でも飲むか!」
「オレは付き合わんぞ。今日はゆっくり休む。……じゃあな」

 次の約束を取り付けようとする柱間を切り捨ててマダラは軽く手を上げると柱間の寝所を出た。どうせ約束など取り付けずとも会える相手だ、気にはしない。どこからかの視線を感じながら千住の屋敷を出て帰る。おそらく扉間だろう。出てきたばかりの柱間の自室へその気配が入っていくのを確認して足を早めた。





「おかえりなさいませ」
「ヒカク、今日は一日休むぞ」
「そうなさってください。やるべきことはやっておきますので」
「お前も休め」
「……今日はうちはは全員休みということにでもなさいますか?」
「戦場から帰ったばかりの者にはそれも良いだろう」

 マダラが自らの自室へ着いて楽な着流しへ着替え始めたところでヒカクが音もなく現れた。穏やかなマダラの様子に小さく頷いて跪いた状態から立ち上がる。

「わかりました。皆には伝えておきます」
「……ヒカク」
「どうしました」
「……」

 朝まで帰らなかったことについてヒカクは何も問おうとしない。マダラがじっと見つめたところでヒカクは小さく笑みを浮かべた。

「マダラ様、私は何も言いませんよ」
「……変わってるな」
「ええ、自覚はしております。それでは、何かあったらお呼び下さい」

 スッと部屋から立ち去ったヒカクを見て、マダラは着替えを終えると縁側に出てこの度の戦いで使用した忍具を並べて手入れを始める。朝の光の中で、マダラの心は穏やかに凪いでいた。




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