*はてん様へ
*学パロ(シリーズとは別物)
*ライハレ
*割とBL








「なぁ、ハレルヤ」
「あぁ?んだよ、ライル?」
「日曜日、……暇か?」
「今週の?別に何も予定はねェけど。……久しぶりに遊ぶか?」
「……!ああ、そのつもりだったんだ」
「おう、良いぜ。いつもの所で。」





 俺とハレルヤの家の丁度間に有る公園のベンチは、中学の時から高校の今でも変わらない遊ぶ時の待ち合わせ場所だ。ただ、今日はいつもとはちょっと違う。俺とハレルヤの、関係が。
 最近、俺とハレルヤは付き合い始めたばかりだ。玉砕覚悟で俺が告白、あっさりハレルヤはOK(あの時は嬉しい以上に驚いた)。そう、今日は恋人同士になってから初めて二人で遊びに行く、つまり、デートだ。
 ハレルヤの俺に対する態度は、恋人同士になってからも全く変わらず友達に対するそれで、甘い雰囲気なんて皆無。だから今日こそは恋人らしい事をしたい。

「ライル」
「!」

 不意に遠くから聞こえた声。視線をそちらへ遣ると、ハレルヤが笑みを浮かべながらこっちへ歩いて来ている。時計を確認。待ち合わせ時間、十時ジャスト。ああ、流石ハレルヤ。

「おはよ、ハレルヤ」
「はよ。今日は何すんだ?」
「んー、お楽しみ?」
「……は?」

 首を傾げたハレルヤを見て俺は思わず笑みを浮かべる。さぁ、楽しいデートの始まりだ。





「……映画?」
「そう、映画。」

 デートと言えばこれだろ?ハレルヤは楽しそうに映画のポスターを眺めてる。ん、良い感じだ。

「良いじゃねェか、たまには。で、どれ見んだ?」
「これ」
「……ふざけてんのか、テメェは」

 俺が指差したポスターを見て、ハレルヤは思い切り顔をしかめた。

「嫌だ」
「えー、良いだろ別に」
「嫌だ。恋愛ものとか見てられっかよ、かったりぃ!」

 そう、恋愛もの。今ヒット中のこの映画、この前テレビでやってたんだ。なんと、恋人と見たい映画第一位!これは是非ハレルヤと見たい。

「まぁまぁ、友達も良いって言ってたし、な?」
「 嫌 だ 」
「……」
「え、おい、ちょ、嫌だって……、ああああ、クソッ!」





 あー、不味いな。これは非常に不味い。

「ハレルヤ、どうだった?」
「どうもこうも有るか。あー、眠ぃ。大体男二人であんなもん見て何が良いってんだ」

 良い雰囲気どころか、ハレルヤの機嫌が最悪。っていうかハレルヤ、俺ら男二人以前に恋人同士だろ。

「……ライル、腹減った。何か食おうぜ」
「ああ、もう昼だしな」

 まだ諦めるな、ライル。取り返せる。

「じゃあそこ入ろうぜ」
「……喫茶店?いつもみてぇにファーストフードで良い」
「たまには、良いだろ?」
「……たまには、な」

 ハレルヤは何か言いたげに眉間に皺寄せてこっちを見たけど、頷いてくれた。





 あああ、ヤバい。もう今日一番ヤバい。ハレルヤの機嫌がさっきよりも悪い。

「ふざけんな、自分のメシ代くらい自分で払う!」
「良いって言ってるだろ!?今日は奢りたい気分なんだよ!」
「んなの知るか!テメェに貸し作んのは嫌なんだよ!」

 レジの前で大喧嘩。ハレルヤ、店員さん困ってる困ってる。頼むからさ、今日くらいは俺を立ててくれよ。俺は強引に金を払ってハレルヤの腕を掴んで喫茶店を出る。

「おい、ライル!」
「気にすんなって」
「……っ、ああもう、離せ!」
「っ!」

 手を、振り払われた。俺の大好きな金の瞳が、ギラギラと俺を睨み付ける。

「マジふざけんなテメェ、胸クソ悪ぃ……。帰る」
「え、」

 判ってる、ハレルヤとの付き合いは長いんだ。もう、話し掛けても無駄だ。ハレルヤが許してくれるまで待つしかない。だんだん遠ざかる後ろ姿。俺はただ突っ立ってそれを見詰める。あー、馬鹿だ、俺。無理に恋人らしい事しようとして、壊してしまった。ずーっとずーっと片想いで、やっと実った想いだったのに。あー、どうしよう。ずきずき、する。

「おい、馬鹿ライル!」
「っ!」

 俯いていた顔を上げる。遠くで、ハレルヤが俺を睨み付けていた。

「なにボサッと突っ立ってんだ!さっさと付いて来やがれ!」

 また遠ざかっていく背中。俺は夢中で追いかけた。





 気まずい。すっごく気まずい。ハレルヤの部屋のベッドに、二人で座って缶ジュースを飲む。あれからずっと無言だ。沈黙が続いてる。一体どうしたら良いんだ?判らない。

「おい、ライル」
「!」
「今日、変だぞ。何考えてんだ」

 まだ静かな怒りを孕んだ声。ハレルヤを見る事が出来ない。

「今日……、恋人になってから初めて二人で出掛けるだろ?だから……恋人らしい事……したいなって……」

 あー、本当、俺は馬鹿だ。今考えたらさ、ハレルヤは俺の告白を冗談だと思って冗談でOKって言ったのかもしれない。舞い上がってて気付かなかった。

「……お前、馬鹿だろ。恋人らしい事?目を醒ませよ、俺は女じゃねェ」

そうだな。ハレルヤは男で、俺も男で。元から実る筈のない想いだった。

「……俺は、お前と気兼ね無く馬鹿やって過ごせる時間が好きだったから、お前と付き合い始めたんだ」
「……え?」
「なのにテメェは付き合いだした途端女相手にするみてェに気ィ遣いやがって、何考えてんだよ?」

 俺は思わずハレルヤの方を見た。ハレルヤはじっと床を睨み付けている。

「俺相手に無駄なことばっかしやがって……馬鹿ライル」
「ハレルヤ……」

 あーもう、本当に俺は馬鹿だ。ハレルヤのこと何にも考えてなかった。

「……ごめん、ハレルヤ」
「やっと判ったかよ?」

 ハレルヤと目が合う。あー、笑ってる。ヤバい、嬉しい。大好き、大好きだハレルヤ。

「よし、じゃあ仕切り直しだ」
「え?」
「……恋人らしい事、するんじゃねェのかよ?」

 耳元で愉しげな声が聞こえる。一瞬頭の中が真っ白になって、くらくらして、気が付いたら俺はベッドにハレルヤを組み敷いていた。空き缶が二つ床に転がってけたたましい音が響く。でも、そんな事より、俺は目の前のハレルヤに夢中。首に腕が回されて引き寄せられる。耳元でまた、声が。ああ、幸せ。

「ライル、俺に気を遣うな、我慢すんな、好きにしやがれ。馬鹿みたいに行動しろ。お前を好きになった時から、俺の覚悟はとっくに出来てんだからよ」

 あー、本当に俺は馬鹿だった。馬鹿は馬鹿らしく、変なこと考えずに馬鹿やってりゃ良かったんだ。ハレルヤなら許してくれる。まぁでも、とりあえず反省するのは後。今は目の前の恋人が最優先だ。
 大好き、ハレルヤ。



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