暑さで、思考がとろけてしまったのかもしれない。
夏の病
サソリがリビングに入って一番最初に見たものは、机に突っ伏しているデイダラだった。
「デイダラ?どうしたんだよ」
「……ダルい」
「夏バテか?大丈夫かよ?」
「……あー…。大丈夫」
「…ふーん」
サソリは、デイダラの隣に座り、持っていた本を読み始めた。しかし、隣に居るデイダラが気になって、なかなか集中できない。見るからにダルそうなデイダラは、少しも動かない。
「おい、マジで大丈夫なのかよ?」
「……」
「なぁ。薬作ってやろうか?」
「……」
「デイ……、あ!?」
いきなり起き上がったかと思うと、デイダラはサソリを抱きしめた。そして、サソリの耳元で、色気を含んだ低音が響く。
「アンタが、足りない」
「、っ!?」
「……足りない」
そうだ。最近のあまりの暑さに耐えかねて、サソリはデイダラに怒ったことがあったのだ。抱きつくな、と。それ以来、デイダラは近寄ってこなくなったのだが、今とうとう我慢が切れたらしい。
「ちょ、や、めろっ……!」
「サソリ」
「っ、!?」
「ちょっと黙ってて……」
すうっ、とサソリの唇をなぞる、デイダラの長い指。顔が近くにあって、サソリの心臓が跳ねた。しかし、サソリも必死に抵抗した。ドン、とデイダラの胸を押して、腕の中から逃げ出す。
「、やめろって!!大丈夫なのかって聞いてんだ!!ちゃんと答えろよ!?」
「ああ。……結構平気」
「……なんだよ。心配して損した」
そう言ってサソリは赤い顔を隠すようにデイダラに背を向け、また本を読み始めようとする。だが、デイダラの言葉によってそれは遮られた。
「でも…」
「でも?」
「食欲が無いんだけど?うん」
「それ、ヤバいだろ。何か食わねえと、スタミナが…」
「アンタなら食えそうなんだけど」
「……結局それか」
「マジでアンタが欲しいんだけど……駄目か?」
デイダラはそう言いながら、サソリの腰に腕を回す。サソリの心臓はいつもより早いペースでドクドクと脈打った。久しぶりに触れたせいか、サソリはデイダラの体温が愛しくてしょうがない。あんなにうっとうしかったのに。
デイダラは、もう一度問う。
「駄目、か?」
「……好きに、しろ……っ」
「クク…。ありがと」
デイダラは、優しく、優しくサソリを抱きしめた。
「あー…柔らけェ。うん」
「……そうかよ」
サソリは更に赤くなって、顔を背けようとした。しかし、デイダラはそれを許さない。顎に手を掛けると、先ほどの続きをするように唇をなぞる。そして、柔らかいサソリの唇に、口付けた。
「…ふっ、……んん…っ」
「……」
デイダラは、サソリの口内を自らの舌でめちゃくちゃに犯す。歯列、上顎をなぞられ、舌を絡められて、サソリは恥ずかしくなるほど感じてしまっていた。体中の力が抜けて、デイダラが支えていなかったら床に崩れていただろう。唇が、離れる。
「は…っ、はぁっ……」
「ククっ!ご馳走様」
「ば…、ばかやろー…。は…っ、どうすんだ、よ。立てねえ……っ!」
「仕方ないじゃん。……オレの部屋、来る?」
つまり、それはお誘い。サソリは、真っ赤な顔をデイダラの肩に埋めて、小さな声で答えた。
「……行く」
「ククク……っ!了解」
デイダラはサソリを抱え上げると、リビングを後にした。
後日、暁のアジトでは、元気になったデイダラの姿が見られた。結局は、サソリに薬を作って貰ったのだ。デイダラ自身には、サソリ本人の方が良く効いたという……。