アンタがいることが、オイラの中で一番の幸せ。





今、この瞬間






 なぜそんな話題が出てきたのか。この犯罪者組織「暁」では考えられないことだった。

「なあ、デイダラ?お前の誕生日っていつなんだ?」

 旦那の口から飛び出した言葉。今までそんな話はしなかったからとても驚いた。

「?なんでそんなこと聞くんだい?」
「いや…、今日ちょっと町へ出かけてたんだが……」

 つまり、こういう事らしい。今日、暁のトレードマーク、黒いマニキュアを調達するために、旦那は化粧品の店に行った。そこで、ある男の人が、誰か(たぶん彼女)の誕生日プレゼントのことを、店員に頼んでいた。なぜ、誕生日にプレゼントを贈るのか分からなかった旦那は、鬼鮫に聞きに行った。すると、鬼鮫は……

「『たぶん、生まれてきてくれてありがとうって気持ちを祝って、形に残すためですよ』って言ってた」
「へえ……」
「んで、デイダラの誕生日はいつなんだ?って、思って……」
「………覚えてない。って言うか…分かんねェし」
「俺も忘れたけど……、分かんねえってなんで?」
「……オイラは生まれた時から手のひらに口があった。だから、化け物扱い。祝ってくれるわけがねェよ。…うん。鬼鮫の言う通りなら、誰も、…オイラを祝う理由なんてない。誕生日なんて、無いのと一緒だし?」

 別に、悲しくなんて無い。どうでもいいことだ。

「デイダラ、俺は……、お前にありがとうって言いたかったの、に…」
「え?」
「……誰も祝う理由なんて無い、だって?誰も?…俺はどうなるんだよ」
「旦那……」
「俺がお前のこと化け物なんて思うわけないのに」

 そうか。なんで気づかなかったんだ?旦那がいるじゃん。この人は、祝ってくれる。

「旦那、ありがとう」
「?なんでお前が言うんだよ?」「旦那も忘れたんだろ?誕生日。だから、今言っただけ」
「じゃあ、俺も……ありがとう」

 この年になって、初めて人に祝ってもらう。オイラも今、この瞬間、旦那が隣にいることに、この幸せに、感謝しよう。
 ありがとう。







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