なんだこれ。真っ暗だな。もし死んだら行き着く先は地獄だって想像はしてたけどよ、…うん。まぁ思ってたよりは酷い所でもねェな。ただ暗いだけ。なんも無い。座ってる感覚はあんのに床は手で触れねェ。

 ……何もねェな

 不思議だ。声がなんていうか……散ってく。霧みたいだ、……うん。





 何時間、いや、何日、何年経ったんだろう。普通の人間だったらきっともう気がおかしくなる頃だろうな。眠ってんのか起きてんのかももう曖昧でわかんねェ。ただ旦那のこと考えてる。アンタもここへ来たんだろ?S級犯罪者のくせに来てねェなんて有り得ねェ。アンタはこの空間でどうしてんだ?狂っちまったか?心配なんだよ、……うん。

「デイダラ」

 ……あ?なんだこれ。さっきまで真っ暗だったのに、なんか……白い。

「デイダラ」

 目の前に、赤。ずっと思い描いていた、サソリの色だった。すぐに手を伸ばした。

「サソリ……っ」

 存在は、今度こそ、掴み取った。腕に精一杯の力を込めて、抱きしめた。

「もう、二度と会えねェと思った…!!」
「俺等、許してもらえたみてえだな」
「何でだ…?うん?まぁ、会えただけでも良かった」

 そう言ってサソリに口付けた。

「アンタ、俺の事考えてた?」
「ああ」
「きっと、神様、とか言う奴が引き合わせてくれたんだな。クク…っ」
「デイダラ……」
「ん?」
「後悔、してねえか?俺の存在を知って、抜け忍になんか成ったから……」

 また笑って、唇を塞ぐように口付ける。

「なぁ、もう何も心配するなよ、うん」
「あ?」
「オレとアンタ、死んだのに今も一緒に居るんだぜ?もう、何も考える必要ねェよ」
「……」
「オレにはアンタだけ、アンタにはオレだけ。だろ?」
「……ああ、そうだな」

 二人で笑いあった。周りに何も無い空間で、もう自分たちは犯罪者では無く、お互いだけを隠すことなく愛し、周りの目を気にすることも無く、二人で居ることだけが幸せ。
 ひとしきり戯れ、じゃれあった後、抱きしめあって、ゆっくりと眠りに付く。

「もし、生まれ変わっても、一緒に居ような」
「今度、俺等普通に恋人になれねえかな」
「クク、そうだな」





 数十年後、とある場所で、一組の双子が生まれた。神とは、残酷なものである。現世の双子は、前世の恋人。語り継がれる伝説は、今も……







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