ある朝。デイダラはいつもの場所で、何かを見て嬉しそうに笑うと、後ろにいたサソリを呼んだ。
「旦那!見てくれよ!もう食べごろじゃねェの?」
「ああ。いけると思うぜ」
2人の視線の先には、真っ赤に熟した苺があった。
この苺は、ある日突然デイダラが持ってきた苗を育てた物だ。毎日2人で苗の様子を見ることが日課となっていた。長く待った甲斐があり、やっと実ったおいしそうな苺。
「美味そうだな。うん」
「そうだな」
「早速食べてみるか?」
「ああ」
そのとき、1つ問題が起きた。熟した苺は、ひとつ。他の苺はまだ、食べるほどに熟してなかったのだ。
「(どうするかな…うん)」
2人で一生懸命育てたのに、どちらかが我慢しなければならないなんて!そう思って考え込むデイダラ。
「(1つの苺を2人で分ける方法…そうだ!)」
何かを思いついたデイダラは、真っ赤な苺を摘み取った。そして、苺のヘタを取ると、サソリの前で自分の口へ放り込む。
「あ〜。美味い!」
「…」
デイダラは予想する。今、サソリは怒っているだろう、と。それを確かめるために、デイダラは視線をチラリとサソリに向けた。
「(……あれ?)」
サソリは、デイダラの予想に反して、至って普通の顔をしていた。そして、じっとデイダラを見ている。
「旦那?怒らねェのかよ?」
「…?別に」
「普段は怒るじゃん」
デイダラがそう言うと、サソリは顔を赤くしてこう言った。
「…だって、いつも後からくれるだろ?」
「…ぇ?」
デイダラは驚いた。だから怒らなかったのか。
「くれないのか…?」
「クク…!ああ、やるよ」
デイダラは、サソリの顎に手を掛け、そっと唇を塞いだ。甘い苺をサソリの口内に押入れ、舌で苺ごとサソリの口の中をかき回す。
「ふ…ぁ……」
「っ、はぁ……美味いかい?」
デイダラは唇をはなすと、問いかける。サソリは無言で頷いた。
「また苺が赤くなったら…今度は旦那が食べさせてくれよ」
「!ば、ばか!食べさせてなんてやるかよ!」
「ククっ。旦那、動揺しすぎ」
それから、苺が赤くなる度、2人は甘い苺をさらに甘く食しました。