とろりと融けた意識の中で、ふと、目を開いた。





やわらかなぬくもり





「ん……、」

 ふと、視界に入ったのは赤。愛しい人の、柔らかな髪。デイダラの腕の中で、眠っていた。

「サソリ……」

 そっと温かい体を引き寄せ、胸元に顔を埋める。とても安心する、デイダラだけの空間だった。とろり、とろりととろけて漂う感覚が、心地よかった。
 サソリがふと身を捩る。胸に当てた耳から聞こえる鼓動が、ほんの少し早くなった。どうやら、目が覚めたみたいだ。

「……デ、ダラ……?」

 掠れた声で紡がれた自分の名前。デイダラは少し意地悪するつもりで何の反応も返さず、眠ったふりを続けた。サソリの細い指先が、そっとデイダラの長い前髪を掻きあげる。

「……」

 指先が、デイダラの頬を、そして唇を撫でた。その行動でデイダラは、サソリが何をしようとしているのか悟る。そして、唇にサソリの吐息が掛かった瞬間、我慢できずに腕を伸ばし、柔らかいそれに口付けた。

「ん、」
「……」

 少し長めに触れて、ちゅ、と音を立てて離れた。

「……起きてたのか」
「ああ」

 デイダラは答えると、サソリの唇の柔らかさを確かめるようにそっとそれに指を這わせた。そして、また優しく触れるだけのキスを繰り返す。ちゅ、ちゅ、と小さなリップノイズが部屋に響く。一通りキスを終え、デイダラは満足するとサソリを腕の中にすっぽりと抱きしめた。二人でまどろむ。とんでもなく幸せな感覚だった。

「……なぁ、サソリ」
「なんだ?」
「オレとこうしてるのって、アンタにとって幸せかい?」
「……ああ」

 デイダラはその言葉を聞くと、ぎゅっとサソリを抱きしめた。

「……だったら、早くオレも一緒に……」
「嫌だ」

 デイダラの言葉はサソリによって遮られる。サソリの目は聞きたくない、とでも言うように閉じられていた。それでもデイダラは話し続ける。

「オレも、アンタとこうしてるのは幸せだ。……うん。だから、早くしてくれねェと、オレも……」
「デイダラ!」

 サソリが大きな声を出したので、デイダラは話をやめた。サソリは、今度は静かに口を開いた。

「デイダラ、……もうすぐ、夜明けだ」

 それを聞くと、デイダラは眉間に皺を寄せた。サソリはそれを見て、困ったような顔をする。

「だから、もう……」
「黙れよ、……うん」

 デイダラはサソリの首筋に顔を埋めると、ちゅ、と吸い付いた。いくつも、いくつも赤い印をつける。サソリはデイダラから離れようとするが、腰に回された腕がそれを許さない。しばらく続けた抵抗も意味が無く、サソリはあきらめた。小さくため息をつくと、デイダラの頭を抱きしめ、好きなようにさせた。

「デイダラ」
「……」
「デイダラ……」

 サソリは自分の掌でデイダラの目をそっと隠した。デイダラは暗い中で、サソリが動いたのと、首筋にちりっと痛みが走ったのを感じた。そして、耳元に感じる吐息。

「デイダラ……、愛してる」





「……わざわざそれ言いに毎晩夢に出てくるくらいなら、早くオレも連れてけよ」

 デイダラは目を開く。ぼやけた視界に映るのは自分の部屋。腕の中にぬくもりは無く、窓から色づいた東の空が見えた。デイダラは腕で目と頬を拭うと、上半身を起こし、伸びをした。そばにある水が入った水筒を手に取り、中身を一気に飲み干した。そして、昨夜の夢に思いを馳せた。昨日のサソリは、夢の中とはいえいつもと様子が違った。ちゃんとは分からないが、何かが違ったのだ。優しくて柔らかな温もり。いつもより、沢山感じ取ることが出来たし、何より昔の感覚に一番近かった。

「はー………」

 デイダラは、大きく息を吐くと起き上がり、仕度をするために鏡の前に立った。そして、小さく息を呑んだ。

「……っ、ぇ」

 首筋に赤い痕。す、とそれに指を這わす。腫れてはいないことから、虫刺されでは無い。そして、その色づきかたと場所に、覚えがあった。
 デイダラは心臓がうるさいのを無視して着替えようと、着ていた黒いタンクトップを脱ごうとした。しかし今度は、ふと、それに目が留まった。付いているのは、赤い、髪。

「……っ!」

 デイダラは自室の扉を開け放つと走り出す。そしてあまり離れていない、ある部屋にたどり着くと、呼吸を整える。ゆっくりとドアノブに手を掛け、そっと回す。心臓が早く脈打つ。キィ、と音をたてて開いた扉の向こうには、





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