如何しよう、如何しよう?もう貴方からニゲラレナイ。





sweet blood - 3





「如何したんだよ?そんなに固まって」

 楽しげな低音が、サソリの耳元で響く。心臓が爆発しそうだ。

「アンタがオレを呼んだんだろ?うん?」
「……ち、がう。呼んだわけじゃ……」
「クク…っ、まあ、たまたま通りかかったから来ただけだしな」

 くつくつと喉の奥で笑い、サソリを更に強く抱きしめた。そしてデイダラは、何を思ったのかサソリの胸元に手を伸ばす。

「!!ちょっと、何やってんだ!!」
「へぇ……胸無いと思ったら……アンタ男だったのかい?」
「どこから如何見てもそうだろ!!」
「……こっち向けよ」

 いきなり頭を捕まれ、ぐいっと後ろを向かされる。目の前にデイダラの顔があって、サソリは息が詰まった。

「こんな美人だったら、女か男か分かんねェよ」
「っ……!」
「は、すげえ顔真っ赤」

 サソリ自身も、自分が赤くなってることが分かった。これ以上、至近距離でデイダラを見ていることなんて出来ない。
 サソリは手を振り払って前を向き、俯いた。その様子を見てデイダラは、また楽しげに笑う。

「ククっ。隠そうとしても無駄だぜ、うん?耳まで真っ赤だし」

 そう言ってデイダラはサソリの赤い耳に口付ける。すると、サソリの体はぴくん、と跳ねた。

「ゃ……!」
「……へぇ、耳が弱点?」
「ひゃう…っ!」

 デイダラは耳の裏を舐める。サソリの反応を楽しみながら。ざらついた舌の感触に、サソリは身を震わせた。

「や、めろ……っ!」
「アンタ、ほんとに男かい?」
「だから、そうだって……っ」
「かわいすぎて、男だろうが食っちまいたい……」
「!!」
「…クククっ。いいだろ?」

 デイダラの舌が、耳の裏から首筋へ這い、前の夜に噛み付いたのと同じ部分を舐めた。サソリは、あの時の感覚を思い出し、慌てた。あの、吸血特有の、甘い感覚。噛み付かれた痛みが、なぜか次の瞬間には不思議な甘い波に変わり、ゆるりゆるりと体中を満たす感覚。いつまでもそれに身を浸していたい様な。
 でも。

「嫌だ…!やめろ…っ!!」
「何で?前の晩に分かったと思うけど……気持ち良いだろ?うん?」
「……、怖い」
「怖い?何で……」
「なん、か……気持ち良いかも知れねえ、けど…自分が自分じゃ、なくなっちまいそうで……!」
「要するに、すげェ気持ち良いんだろ?」
「……」

 確かに、そう。
デイダラの言うとおり気持ち良いのだ。

「……此れぐらいの快楽でそんなになって如何すんだよ?……ヤる時、大変だぜ?」
「〜っ!」
「……また真っ赤になっちゃって。もしかして、経験無い?」
「悪いかよ!?」

 サソリは、人を好きになったことが無い。だからそういうことをしたいわけも無く、未経験だった。

「一人でやった事は?」
「……無い」
「ふーん」

 デイダラは、サソリから離れ、ため息を吐いた。

「でも、血は吸わせてくれよ」
「いやだ……」
「オレ、何のために此処に来てるのか分からなくなるじゃん」

 サソリは、ふと、気付いた。デイダラは、『俺に会いに来た』のではなく、『俺の血を吸いに来た』ということに。ずきんと、胸が痛んだ。いくら好きになっても、人間と吸血鬼。食料と、捕食者。食べられることを拒否する食料なんて、捕食者にとっては煩わしいだけだ。じゃあ、少しでも離れたくないなら、血を、与えなければならない。

「……分かっ、た。飲んでも、良いぜ……」
「良いのかい?」
「……ああ」

 デイダラは、サソリの体が震えていることに気付いた。様子を伺いながら、顎を持ち上げ、首筋に口付ける。サソリの体がびくりとはねた。緊張しているのだろう。目が、ぎゅっと閉じられている。その様子を見て、デイダラはまたため息を吐いた。

「……分かったよ。一口で我慢してやる」

 デイダラはそう言うと、間髪入れず、サソリの柔らかい首筋に牙を立てた。

「ぁ……っ!」
「……」

 ちゅう、と少しだけ吸い上げて、離れた。ほんの少しの快楽に、サソリは震えた。体は、もう少しその感覚を、欲しがっていたのかもしれない。

「な、一口だろ?」
「……あ、あ」
「それにしても、怖いなんていう奴は初めてだな。やっぱアンタ、面白いな」

 そう言うと、デイダラは窓のほうへ歩いていき、渕に腰掛けた。

「これから、毎週土曜日に、会いに来るからな」
「え……」
「だから、血を吸われるのに慣れろよ?只でさえ、吸い尽くしたいのを我慢してるんだぜ」

 吸い尽くす=殺す。その式が頭に浮かび、サソリは背に冷や汗をかいた。それと同時に、毎週土曜日に会えるということに、心の底で喜んだ。

「じゃあ、オレはこれで……あ、ちょっとこっち来いよ」
「……?」

 サソリが近づいていくと、いきなりぐいっと腕を引かれ、デイダラの腕の中に抱き込まれた。そして、デイダラは真っ赤になっているサソリの耳元で、低く、甘く、囁いた。

「いつか、吸血以上の最高の快楽を教えてやるよ」
「!!」
「ククっ!またな!」

 そして、次にサソリが言葉を発する前に、デイダラは消えていた。夜の闇の中に、ほんの少しシルエットが見えたような気がした。サソリは、最後にデイダラが残した意味深な言葉に、頭を悩ませることになる。
 さぁ、最高の快楽を、アンタに。






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