「……暇」
「……暇っスね」
「……来島殿」
「何スか?」
「出掛けないか?」
そう言って直と来島また子が暇潰しに出掛けたのは、一時間程前。そして、今。
「晋助様ァアァ!!」
スパァン、と襖が開く。高杉は特に驚きもせず、吸っていた煙管の紫煙を吐き出し、そちらに目を向けた。
「……どうした、来島」
「直が真撰組に捕まったっス!!」
「……」
高杉は再び煙管に口を着けた。
「どうするんスか!?助けに……!」
「ほっとけ」
「!?」
「……どうせ暇潰しだ」
高杉は小さく笑った。
「副長ォオォ!!」
スパァン、と襖が開く。部屋にいた真撰組副長、土方十四郎は肩をびくりと震わせた。
「!?どうした、テロリストか!?」
「いや、人を捕まえたんですけど、何て言うか、その、テロリストっぽいけどリストに無いんですよ!」
「馬鹿野郎!一般市民じゃねぇかァア!しかもそのだじゃれ面白くねェエ!!」
「いや、違っ、ぎゃああ!」
隊士の頭を一発殴り、土方は局長、近藤の所へ向かう。
スパァン!
「近藤さん!!」
「おお、トシ」
土方が襖を開くと、其処には真面目な顔をした近藤と、その前に縛られて座っている白銀の髪を持つ青年がいた。漆黒の瞳が、土方を見詰めている。土方は、やはりリストで見たことのない顔に戸惑う。
「近藤さん、こいつァ、」
「ああ、リストにはない。」
「……じゃあ何で捕まえたんですか?」
「こんなモン持ってたんでさァ」
近藤の横に控えていた沖田が、二本の刀を出した。
「この廃刀令のご時世に。どうやら幕府の人間でもなさそうだ」
「トシ、どう思う?」
土方は再び銀髪の青年の方を見た。相変わらず、真っ黒な目で土方を見詰めている。
「おい、お前、何で刀を持ってる?何処のモンだ?」
「土方さん、無駄でさァ。そいつァ何も喋りませんぜ」
「……、知ってどうするんだ」
「「「!!」」」
青年が言葉を発した。近藤と沖田は驚く。土方は言い返した。
「返答によっちゃあ只じゃ置かねぇ。名前は?」
「……」
「おい、」
「……、びゃくや、」
「?」
「名は白夜、だ」
「白夜……?」
やはり、聞いたことのない名。
「この刀は、」
「ついでに」
「あ?」
再び問い掛けようとした土方を、青年、白夜の声が遮った。
「折角ここへ来たのだ。真撰組隊士の方々に、」
手合わせ願おう。
「「「!!」」」
はらり。
次の瞬間、白夜の姿が消えた。白夜を縛っていた縄だけが、畳に残っていた。