時は五月下旬、ハプティズム兄弟が新しい環境に大分慣れた頃だった。
 その日、生徒会役員と執行部員の6人は全員授業を欠席し、生徒会室に集まっていた。

「何だよ、会議って?」

 足を組んで座っているハレルヤが少し首を傾げてニールに問い掛けた。

「ああ、年に二回ある生徒会の一番大事な行事って言えば分かるか?」
「あ、生徒総会、ですか?」
「当たり!」

 アレルヤの答えにニールは笑って頷いた。

「よし、お前さん達は今回が初めてだからな、ざっと説明するぜ」
「はい!」
「この学園の生徒総会は全員参加制だ。つまり、直接民主主義。各クラスの教室に置いてある意見箱の中身を回収して全部チェックする」
「はぁ!?全部か!?」
「ああ、だから最初に言っただろ?執行部には人手が要る、って」
「毎回大変なんだよなぁ、この作業……」

 ハレルヤの言葉にニールが笑い、ライルは溜め息を吐いた。
 この学園はクラス数が多い。その箱の数も、意見の量も、半端ではない。それを全部チェックするなんて考えるだけで気が遠くなりそうだ。

「何でそんな制度なんだよ……クラスで話し合わせて二、三個ずつ意見を出させりゃいーだろ」
「はは、そうだな。でもやっぱりこっちの方が色々意見が出るから、より良い学園に出来る。だろ?」
「……そうかよ」

 ニールの意見はもっともだ。ああやっぱり生徒会長だなぁ、と、ハレルヤは失礼な事を考えた。

「話を戻すぞ。チェックした中ですぐに解決出来そうな物は俺達で何とかするが、話し合う必要のある物を議題として選び出す。その後は当日話し合いだ。うん、まぁ……ざっとこんなもんだな」
「へぇ」
「分かりました」
「じゃあ、これから意見を回収して回るぞ。ティエリア、刹那、中等部の分を頼むぜ」
「もう一人こちらへ回して下さい」

 ティエリアが間髪入れず言った。

「はは、そう言うと思った。ライル、頼めるか?」
「オーケー、兄さん」
「よし、ハレルヤとアレルヤは俺と一緒に高等部の分な」
「はい!」
「はいな」

 それぞれ立ち上がり、ぞろぞろと生徒会室を出ていく。最後に明かりを消そうと残っていたニールを待って、ライルはニヤリと笑った。

「両手に花、だな、兄さん?」
「……、お前もだろ」
「ああ、棘付きだけど、ね」

 まだ笑っているライルを小突き、ニールは生徒会室を出た。





「……、多過ぎだろ、これ」
「うん、そうだね……」

 この学園の生徒は、生徒会活動になんと積極的なのだろう。生徒会室の机の上に山の如く積まれた小さな紙切れは、処理せども処理せども全く減らない。紙の内容を読んで簡単にメモを取り、それをシュレッダーに掛けて粉々にする。この単調な作業に、ハレルヤとアレルヤは疲れを見せ始めていた。

「……今日は多分夜まで掛かるだろうな」
「マジかよ……」

 同じく疲れてきているライルの言葉に、ハレルヤは呻いた。

「そうやって喋ってだらけている暇が有ったら少しでも手を動かせ」

 物凄いスピードで紙切れを処理しつつ、ティエリアがハレルヤとライルを睨んだ。眉間に皺が寄っている。機嫌が悪いのは一目瞭然だ。それでもハレルヤはティエリアを睨み返した。

「そう言うならテメェの隣の奴はどうなんだ?」

 ティエリアは隣に視線を遣り、更に眉を寄せた。刹那がいつものごとく船を漕いでいる。

「……、刹那・F・セイエイ」
「……」

 返事は、無い。

 ぷちり。

 何かの音がした。ティエリアは刹那の手首を掴んで椅子から落とし、そのまま引き摺って生徒会室を出ていった。

「……ティエリアが居なくなっちまった……お前ら、頼むから仕事してくれよ……」

 ニールが半泣きで呟いた。





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