俺は非常に気分が良かった。久し振りに甘楽が家へ来たんだ。2人で家でだらだらして過ごす時間は結構気に入ってる。大抵2人でテレビ見たりして過ごすんだが……この時、決まって甘楽はソファーに座っている俺の足の間に座って凭れてくる。……かわいいんだよな、これが。甘楽の背中が俺の胸や腹に触れる感触にはまだ慣れなくて固まっちまう。髪からいい匂いがするし、身体とは逆に心臓は大暴れだ。何でもない風にテレビを見ちゃいるが、内心は緊張してる。……あああああ恥ずかしいな、クソッ!でも、すげぇ幸せなんだ。
 だから俺は非常に気分が良かった。……さっきまではな。

「ていうことがあったんだよねぇ」
「よし臨也殺す」
「ストップシズちゃん、また喧嘩してるとこにしずかが通りかかったらどうするつもり?」
「……」

 それは困る。またしずかを傷付けることになるかもしれない。でもなぁ、イラついて仕方ないんだ。臨也の野郎、しずかを泣かせやがって……!

「私、シズちゃん怒らせる為にこんなこと言ったわけじゃないし」
「……じゃあ何のために言ったんだ」
「シズちゃんも協力してあげて欲しいんだよ」
「あー、またその話か?もう何度も言ったがなぁ、俺は協力しない」

 しずかが臨也と付き合う?そんなの応援出来るわけないだろ。俺はずっと反対してる。今回だって臨也はしずかを泣かせた。万が一しずかと臨也がくっついたとしてもすぐに別れるに決まってる。臨也じゃしずかを幸せには出来ない。

「あのさ、私ももう何度も言ったけど、しずかは臨也が好きなんだよ。今回だって泣いちゃってさ、傷付いても臨也が好きで諦められないんだよ。なんでそこで協力してしずかを幸せにしてあげようと思わないわけ?」
「……臨也じゃしずかは幸せに出来ない」
「なんで?」
「臨也だからだ」
「ふーん。しずかは幸せになろうとして努力してるのになぁ」
「……」

 甘楽の声がだんだん刺々しくなってくる。でもな、俺はしずかに本当に幸せになって欲しいんだ。臨也には無理だ。

「あのさ、シズちゃんとおんなじようなこと私も臨也に沢山言われたよ。シズちゃん相手じゃ私は幸せになれない、ってね。でもさ、私今幸せなんだけどなぁ」

 俺にもたれ掛かって甘楽がじっと見上げてくる。……言い返せねぇ。俺だって甘楽が傍に居て幸せだ。好きな奴が傍に居る。すげぇ幸せだ。

「あとさ、しずかはシズちゃんのこと大好きだよね?好かれてるってことは判ってるよね?」
「……ああ」
「だったら協力してあげないと、凄くしずかがかわいそうなんだけど。大好きなお兄ちゃんにずっと反対されてても臨也が好きなんだよ?想いの強さが伝わってこない?ここまで言って協力する気になれないんだったらちょっと幻滅」

 あー、臨也に似てよく喋りやがる。理屈を捏ね回すやつは嫌いだ。……でも、甘楽に言われた事はどうしても考え込んでしまうんだ。どうすれば良いんだ、俺は。

「あー……、チッ、協力してやる」
「うん、それでこそシズちゃん」

 こうするしか無いよな。あー、クソッ!
 はっきり言ってしずかを臨也なんかに取られたくない。どうしてこうなった。

「……あ」
「ん?」

 今、なんでこんなことになっているのか判った。しずかが臨也を好きだから悪いんだ。しずかが別のやつを好きなんだったら……?

「なんでも無い」
「え、気になるんだけど」
「気にするな」

  そうだ、しずかが好きなやつが臨也じゃなければ良い。なんで気付かなかったんだ。


勿体無いんだ、てめぇには


 臨也なんかにしずかを取られて堪るか。







シズちゃんと甘楽は凄い健全カップルです。キスも軽いのだけだと良い。


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