久し振りにしずかの家に遊びに行くことになった。届いたメールはいつもと変わらず短かった。『家へ来い』、たったそれだけ。本当そっけないよねぇ。まぁシズちゃんに似ててかわいいけどね。
 メールを貰ってから私はのんびり家を出て、お土産にマックのシェイクをテイクアウトした。新作なんだよね、ヨーグルト味。しずかはシズちゃんとおんなじでシェイク大好きだから、きっと喜ぶだろうなぁ、とか、思ってたんだけど。うん、正直予想外だった。玄関を開けた先にいたしずかは私の顔を見るなり泣き出した。

「……しずか?」
「か、かん、ら……っ」

 うわ、目、真っ赤。ぼろぼろ、って、涙が。ああ、こんなに泣いてるの見るの久し振りだ。しずかが泣く原因はひとつしかない。……臨也だ。今度は何をしたんだろう。



 取り敢えず中に上がらせてもらってしずかを座らせた。目の前に持ってきたシェイクを置いてみる。手に取る気配はない。あーあ、折角買ってきたのに温くなりそうだなぁ。しずかには解らないように小さな溜め息を吐いて自分の分のシェイクを一口飲んだ。あ、結構美味しい。

「で、どうかしたの?」
「……この前、兄貴と臨也が喧嘩してるとこに通り掛かったんだ」
「うん、それで?」
「臨也が……お、俺のこと、がさつ、だって……っ」
「……直接言われたの?」
「兄貴に、言って、た……っ」

 今度は思い切り溜め息を吐いた。
  本当に臨也は……直接だったら絶対言わないよ、そんなこと。無意識にしずかのことが好きな癖してさぁ、なんで気付かないでシズちゃん相手には意地張っちゃうかなぁ。
 しかも言ってるワードがいただけない。がさつ、だって。うん、素直に認めるよ、しずかは確かにがさつだ。残念ながらしずかはシズちゃんのことが大好きで、小さい時からシズちゃんの真似をしてきたせいでこうなった。真似をしたら怪力までおんなじように発掘してしまったくらいだ。女の子とは思えない口調、行動、怪力。うん、私はこれはシズちゃんの責任だと思う。妹を甘やかして口調や行動をちゃんと女の子に改めてあげなかったシズちゃんに非がある。
 あー、どうしよう。今回のフォローは凄く難しいだろうなぁ。

「しずか、一旦落ち着こうよ。ほらシェイク」
「ん……」

 そっと涙を拭いて頭を優しく撫でる。ついでにシェイクを手渡した。あ、飲んでくれた。良かった、無駄になるかと思った。
 暫く頭を撫でてあげてたらやっと落ち着いたみたいだ。涙が止まった。ちゃっかりシェイクも飲んじゃってるし。マシになったかな。
 しずかはひとつ大きな溜め息を吐いた。

「悪いな、甘楽……判ってたことなんだが、やっぱり臨也が言ってるのを直で見たらショックでよ」
「そりゃ好きな人にそんなこと言われたらショック受けるよねぇ」
「……でも本当の事なんだよな。だからどうしようもない」

 困った。自覚はちゃんとあるみたいだ。余計にフォローが難しい。これって流石臨也、って言うべきかな。こんなに的確に痛いとこを突くなんてね。

「……俺、甘楽みたいだったら良かったんだがな」
「え、私?」
「ああ、女らしくて、背が小さくて……すげぇかわいい。はは、……そりゃ臨也も毎日甘楽見てたら俺なんかがさつとしか思えないんだろうな」
「ちょっと待って」

 今日のしずかは自虐的過ぎる。こんなの私が好きなしずかじゃない。痛々しくて困るよ。
 こんなこと言ってるけどさ、私からすればしずかにも羨ましく思える部分が沢山有るんだよね。背が高いの気にしてるみたいだけど、正直言って完全なモデル体型なんだよね。細くて長くて綺麗な手足と小さな顔は凄く羨ましい。肌の色も白いし。私だって白いけどさぁ、しずかの肌は本当に綺麗な色だ。シズちゃんの真似して染めた綺麗な金髪が似合ってる。顔だってひとつひとつのパーツが調っててるしね。私がかわいいならしずかは美人だ。それに……胸が大きい。うん、大きい。前に聞いたらEって言ってたなぁ。凄い羨ましいんだけど。あ、私だって無いわけじゃないんだからね。一応Cある。でもしずかと並んだらどうしてもお粗末に見えるんだよねぇ。悔しい。そりゃ毎日しずかのこと見てたらシズちゃんも私の身体に魅力なんか感じないよね。……あああ、ストップ。私まで自虐的になってどうするんだ。
 あ、勿論しずかの良いところは外見だけじゃない。性格だって最高だ。かわいいところもよく見れば割とある。なにより、竹を割ったような、という例えがよく合うさっぱりとした性格。私はそこが好きなんだ。見ていて気持ちが良い。思い遣りだってある。ちょっと強引だったけど私とシズちゃんをくっ付けてくれたのもしずかだ。
 要するにしずかは魅力たっぷりだ。残念ながらその魅力を怪力と口調とが隠してしまってるけど。ちょっと磨けばすっごく輝くのにさぁ、勿体ない。

「しずか、判ってるんならさぁ、努力してみなよ」
「……突然女らしくなれって言うのか?無理だ」
「無理?なんで?」
「俺が女らしくなったとこで気持ち悪いだけだろ」
「なんでやろうともしないでそんなこと言うかなぁ。しずかってそんな簡単に何もかも諦めるような子だったっけ?だったらショックなんだけど」
「……」

 私の言葉にしずかは黙り込んでしまった。じっと何かを考え込んでる。大丈夫だ、今の言葉は効いたはず。いつものしずかに戻ってよ。

「努力しなよ、手伝うから。今度一緒に買い物行こう。化粧もしてあげる。絶対かわいくなれるって」
「……絶対、って言ったな?」
「絶対だよ。私が嘘吐くと思う?」
「どの口がそれを言うんだ」

 あ、笑った。やっぱりしずかは笑ってるべきだ。落ち込んでるしずかなんてらしくない。

「あー、頑張ってみる、か……」
「やっとその気になった?取り敢えず形だけでも良いからかわいくなろうよ。来週は買い物ね」
「おう、よく判んないから頼むぜ、甘楽」

 ああ、良かった。まだちょっと目は赤いけどはにかんだような笑顔がかわいい。しずかには幸せになって欲しいなぁ。

親友に幸あれ


  私が頑張らないと、ね。







甘いもの+乳製品→ヨーグルトシェイク、ですよね。おそらくシズちゃんの好物になるに違いない(^O^)


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