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巡る輪の至る場所

※一部オリキャラを含みます


そもそものはじまりは、伸ばした長い髪を貴方に触って欲しかったのだ。


二十一世期の平和な日本で生を受けた名字名前は仲のいい両親に愛されて何不自由なく育った。一人っ子ということもあり甘やかされて天真爛漫で愛嬌のある子供だった。そんな私は小学校に上がる前の春、原因不明の三日三晩続く高熱に見舞われた。医者に処方された薬を飲んでも熱は下がらず、混濁した意識の中で長く哀しい夢を見た。
人ならざるものとの長い戦い、刃物の怜悧な輝きと血の匂い、傷跡や打撲の絶えない痛ましい身体、同じように命をかけそして若くして死んでいった最も愛する人。早世を予感させるような自身までも燃やし尽くしてしまう程に熱い心を持った炎柱、煉獄杏寿郎。

私はどうやら生まれ変わりらしい。
ようやく熱が下がった朝に膨大な夢の記憶を引継ぎ急に大人になった私はそう結論づけた。人が変わったように大人びた私のことを両親は小学校に上がったことで成長したのだと捉えたようで特に訝しむこともなく変わらずに愛情を注いでくれた。日毎に彼女の記憶と今までの私の日々が溶け合って境目がわからなくなり前世の私である彼女と今世の私は一人の名字名前となった。

一つ、変わったことは『煉獄杏寿郎』という人を探すということだ。
前世の、いや、今ではもう自分自身のものになった記憶の中でいつも凛々しい表情で溌剌とした声を掛けてくれる秋の落ち葉のような鮮やかな黄金色と赤色を溶かした髪を持つ男の人。陽光を固めたような琥珀の瞳が射抜くような鋭さから、こちらを見ると柔らかく綻ぶ様子がとても印象的だった。
彼のことを思う度に初恋すら知らなかった私には刺激が強すぎるほど、愛おしく思う気持ちが胸を締め付けるのだった。

今世では会ったこともないけれど私はこの煉獄杏寿郎という人が好きなのだ。
何てったって彼は前世の恋人なのだから。


「名前、ネクタイ結べた?」
ママはいつまでも心配症で高校生になっても私の身支度に口を挟む。六歳の時から大人になってしまった私には、このママはとても可愛い人に思える。
「うん、出来てるでしょ?」
「そうね、うん、似合ってる…スカートちょっと短くしたりしなくていいの?」
膝丈のスカートは校則通りだけれど確かに同級生はもう少し短いような気もする。
「そういうのはちょっと違うかな」
「可愛いんだからイマドキって感じの女子高生すればいいのに」
「ママ、名前が不良になったら困るよ」
「だってこの子聞き分け良すぎるもの」
「じゃあ…アイス食べたいから買っておいて?」
そんなんじゃなくって!と言うママをパパが宥めに来てくれなかったらきっとスカート折ってみる?とか言われてただろう。
いつまでも仲良しの両親に見送られて行ってきます、と家を出る。

入学したての高校までの通学路をきょろきょろ辺りを観察しながら歩く。散り始めた桜の花弁を運ぶ春風は少し冷たく、伸ばしている長い髪に勢いよく吹き付ける。これは学校に着く頃にはぼさぼさになってしまいそうだ。
六歳から探している恋人を私は未だに見つけられていない。小学校でも中学校でもくまなく探したけれど『煉獄』なんて珍しい苗字の人はいなかった。もしかして名前が変わっているのかもと金髪の人を注意深く観察したりもしているけれど、彼とは出会えなかった。
もしかすると生まれ変われたのは私だけなのかもしれないし、彼は今お爺さんや赤ちゃんなのかもしれない。
そんな諦めの気持ちもこの十年で少しづつ生まれつつあった。
それでも、中学に上がってからは男子生徒に告白されるなんてこともあったけど彼以上に恋しいと思えるような異性はもちろんいなかった。
このまま一生会えなくてお婆さんになったらどうしようというのが高校一年生の私の目下の悩みである。

まだよそよそしい空気のなかホームルームが終わると、近くの席の女の子たちに話しかけられる。
「名字さん、どこの中学?」
「南中だよ」
「私たち東三中!わたし陽奈、こっちは薫。宜しくね」
「あ、バレー強いところだ」
「そう!私たちバレー部だったの、高校も入るんだ。名字さんは?」
爽やかな短髪の二人はすらりとした身体つきでいかにもスポーツが出来る雰囲気がある。
前世の記憶では人並外れた反射神経を持っていた私だが、今世は中の下の運動神経しか持ち合わせておらず体育会系のクラブとは疎遠だ。
「名前でいいよ。部活かぁ…どうしようかな、あんまり考えてないや」
「何かやってるの?大人っぽいし髪すっごい綺麗だし…サロモとかやってる?」
「やってないやってない、伸ばしてるだけだよ」

触っていい?と髪を梳く彼女たちの手がすべる感覚にまた昔の『煉獄杏寿郎』との記憶が思い出される。彼の手もこうしてよく髪を梳いてくれた。名前の髪は艶々で柔いな、と楽しそうに指を通すのだ。その手がとても優しくて心地よくて、私はその時間がとても好きだった。

「そういえば、次の授業歴史じゃん」
「あ!噂の騎馬戦センセーだ?」
「騎馬戦?」

何それ、と思った時ガラリと教室の扉が開く。
何となしに目を向けるとそこには、記憶通りの『煉獄杏寿郎』がワイシャツにスラックスという記憶にはない出立で立っていた。

「煉獄杏寿郎」

教師の登場で静かになっていた教室では私の呟きは存外大きく聞こえたようで、教壇に向かっていた彼の耳にも聞こえたようだ。
記憶と寸分違わない琥珀の瞳がこちらを見る。次の瞬間に、にこりと快活に笑った彼の表情で私は直感した。

「先生の名前を予習済みとは優秀だな!
しかし呼び捨てにするのは良くないな、煉獄先生だ!」

さぁ席について、と教室を見渡した彼の言葉に従いながらこういう展開を全く予想していなかったので暫し呆然としてしまう。よく頭が真っ白になるというが、真っ白ではなく脳が高速回転していた。幼少期に蘇った記憶の中の共に過ごした日々や彼を探し続けた現代の日々が一瞬の間に脳内で再生されて情報の洪水を引き起こす。

彼は私を覚えていないんだ。

急な再会に頭がクラクラして吐きそうになりチャイムの音を背に教室から走り出していた。
次の授業で保健室から帰還した私に大丈夫かと気遣ってくれた陽奈と薫から、先生ぽかんとしてたよ、と聞かされた。それはそうだろうと思うけど、こっちだってぽかんである。
保健室のベッドでずっと考えていた。
どうして覚えていないのだろう。記憶が正しいのなら両思いで愛し合っていたはずなのに、私だけが覚えていて彼が忘れているのは可笑しくないだろうか。
しかも先生と生徒だなんてどこの恋愛ドラマだ。
いや、まだドラマならいいけれど現代で先生と生徒の恋愛が露見すれば彼を犯罪者にしてしまう。淫行教師の落胤を押されて懲戒免職は免れない。
せっかく探し続けた『煉獄杏寿郎』が見つかったのに、また私の前には壁が現れたのだった。

その日から私は毎日出来るだけ可愛いと思ってもらえるように念入りに朝の身支度に時間を掛けるようになった。初対面で顔を真っ青にして走り去った生徒に対して良い印象なんて無いだろう。第一印象が悪いとそこからは何をしてもプラスだとテレビでも言っていたからきっと大丈夫だ。それに確かに彼は『生まれ変わってもまた君と結ばれたい』と言っていたではないか。こうして生まれ変わったのだから例え許されない関係でも結ばれなくてはおかしいだろう。

煉獄先生は2回目の授業の前に、名字もう大丈夫なのか?と声をかけてきた。言いたいことがたくさんあるのに、目の前に本人がいるのに何も言えないというのはとても苦しかった。すみませんでした、と頭を下げると肩に流した髪が滑り落ちた。顔をあげて溢れた髪を耳にかけてもう一度煉獄先生の顔を見る。
鮮やかな髪色、琥珀の瞳、秀でた額に凛々しい眉、良く動く唇と大きな声の出る口元。どれもこれも記憶の中の『煉獄杏寿郎』その人であったが、唯一その身に纏う雰囲気だけは穏やかで張り詰めたところのない柔らかさがあった。
気分が悪い時は我慢しなくて良いからな、と先生らしいことを言って微笑んだ彼は教壇に上がり、張りのある大きな声で授業の始まりを告げた。
そんな歴史の授業は毎度内容はそっちのけでずっと煉獄先生を目で追いかけてしまう。記憶と被ったり離れたりする表情や仕草に一喜一憂し、彼の死を見送ったことを思い出して生きている彼が目の前にいることに堪らなくなって泣きそうにもなった。
その中で気づいたが私が完全に前世の私ではないように、煉獄先生も『煉獄杏寿郎』と同一ではなかった。どちらを好きなのか分からないけれど、たぶん、二人とも好きなのだ。小さな違いはあっても彼は紛れもない彼なのだった。

「名前、煉獄センセー好きでしょ」
「バレバレ?」
「いや誰でも分かるでしょ。露骨に見過ぎだよ」

高校生活も慣れてきて1ヶ月も経つとすっかり打ち解けた陽奈と薫とお昼を食べていると唐突に指摘された。
隠しても仕方がない。それに彼はどうやらそれなりにモテるようで、学年問わず生徒に慕われていた。なら別に好きだとばれるくらいではPTA事案にならないなと踏んで存分に見つめている。

「また結婚してくれないかな」
「また?」
「脳内で挙式済みって事でしょ…思ったよりヤバイね名前。大人っぽいのに不思議ちゃんだよね」
彼とは前世で愛し合っていたんだ、結婚の約束もしてくれてたんだよ、なんて言い出したら流石に二人とも私のこと不思議ちゃんで流してはくれないだろう。
「そう、妄想婚」
「ヤバイな」「ヤバイね」

ヤバイと言われる私は確かに普通では持ち得ない前世の記憶があるのだと説明しても誰にも理解してもらえないだろうし、一番分かって欲しい煉獄先生には気持ち悪いと思われるだろう。そうなるくらいならば探し続けた煉獄先生を見つめるだけでも一先ず満足だ。
けれど好きだという気持ちはそれだけでは抑えられるはずもなく彼女はいないのだろうか、私の知る彼と同じように優しい人なのだろうか、今の私とは歳が離れているけれど恋愛対象になるのだろうかと、煉獄先生のことを何でも知りたかった。
だけどいざ口を開けば、やはり記憶のことが一番に喉の奥に詰まるのだ。

本当に私が誰かわからないの?
忘れちゃったの?
愛してくれたことも愛されたことも全部今の貴方は知らないの?

愛し愛された記憶を持つことは幸福であったけれど、私だけが彼を覚えていることはこの上ない不幸でもあった。


一学期が終わりに近づき季節が夏に差し掛かっても特に煉獄先生と個人的な会話をすることはなく、夏休みを迎えようとしていた。せっかく見つけた恋人にどうやってまた好きになって貰えばいいのか分からず、ひたすら熱い視線を送る日々にもそろそろ飽きてきた。
もう一つ困ったことがあった。歴史の成績が群を抜いて悪いのだ。当たり前と言えば当たり前だが、聞いていないのだから仕方がない。
テスト結果を見せるとママはとても驚いていたけれど、なんでもそれなりにこなしてきた私の初めての苦手科目に一緒に頑張ろうねと笑ってくれた。トイレに日本史の年表を貼ってくれたりして少しは真面目に聞かないとまずいかなと思う。そんな中、『夏季講習のお知らせ』の横に『補講対象者』の張り紙が出たのは夏休みに入る2日前だった。

「良かったね、名前」
「先生と二人きりじゃん」

陽奈と薫に揶揄われた補講対象者のリストにはしっかり『名字  歴史』と書かれていた。数学や英語は対象者が多いのに人気者の煉獄先生の歴史は皆成績がいいらしく対象者は私だけという何とも不名誉な状況だった。

夏季講習の後に組まれた補講は全部で五日間あり、クラス全員参加である午前中の夏季講習の後、2コマ連続の補講はそれぞれ指定された教室に向かう。
煉獄先生と二人きりだなんて願ったり叶ったりだけど、とても緊張する。深呼吸してから扉を開けると既に教室に来ていた先生は教壇ではなく生徒の机に座っていた。私に気付くとすぐ後ろの席を促され大人しく席に着くと、今までで一番近くに焦がれ続けた煉獄先生がいて手を伸ばせばその髪にも、骨張った頬にも触れられてしまう事に胸が締め付けられた。横向きに座った先生が背もたれに肘を掛けて顔だけこちらに向ける。

「さて、一学期は俺の授業中ずっと上の空だったな!」
「すみません」
「名字が勉学にやる気がないのかと思って他の先生に聞いたら、とても優秀だというので驚いたぞ。
俺の進め方が分かりにくかっただろうか?何か苦手なところがあるのなら…」
「違うんです、煉獄先生は何も悪くないです。
私が集中できていなかっただけです。困らせてごめんなさい。」
「ふむ、ますます不思議だな。どうしていつもはああも…
いや、とにかく五日間みっちり教えるから遅れを取り戻そうな」
「はい」
彼のお手製のプリントで教科書の要点をもう一度浚っていく。この距離で見つめる勇気は流石にないので大人しく彼の説明を聞いてプリントを埋めてノートにメモを取っていく。真面目に取り組めばあっと言う間に時間は過ぎてしまい終了のチャイムが鳴った。
「うん、予定よりも大分進んだな!
この調子なら大丈夫そうだ」
「予定より早く終わったら、どうするんですか?」
「ん?そうだな最終日は早めに切り上げてもいいぞ」
「じゃあ、最終日は先生と話したいです」
「相談か?いいぞ!」
朗らかに笑った煉獄先生は暑いから気をつけて帰るようにと言って職員室へと戻っていく。その背を見つめながら取り付けた約束が嬉しくて痛いくらい高鳴る胸を掌できゅうと押さえる。五日目の補講を楽しみに私は夏休み中の人気の少ない学校を後にした。

五日目は期待して登校した私を打ちのめすように空調が壊れたそうで、むわりとした熱気の溜まった教室に汗が滲んだ。窓を全開にして午前中の講習を終えると首筋もカッターシャツの中もべたりとして気持ちが悪いかった。団扇や下敷きで仰ぎながらへばる同級生と同じように下敷きの温い風を顔に当てながら制汗シートで肌を拭う。少しさっぱりした後、今日で最期の補講へと向かった。

「よし、これで補講は終わりだ。名字よく頑張ったな!」
「ありがとうございました」
「それにしても暑いな…来週には業者が来るらしいが、すまんな」
「ここは日陰なので他の教室より少しましです。窓のそばだと冷たい風がよく通りますし」
プリントを置いて窓の横に立つ。風を孕む白いカーテンを半分だけ開けて外を見ると冷えた風が心地よかった。
「本当だな、ここで涼むか。
それで…話とは何だろうか?困ったことでもあったのか?」
隣に立った先生は風を顔に受けて気持ちよさそうに目を閉じた。

「煉獄先生、彼女いるんですか」
「…そういう話か。君らは本当に恋バナというやつが好きだな」
「どうなんですか」
「いないよ、だが先生だってプライベートがあるんだ。あまり口出しされるのは嫌だと君たちも知っているだろう?」
彼女いないのか、とほっとした事でうっかり踏み込んだ質問をしてしまった。

「私は先生の恋愛対象になれますか?」

驚いたように目を開いた煉獄先生との間を急に強い風が吹き抜ける。パタパタと頬に当たる自身の黒い髪が風に煽られて広がってしまう。左手で抑えようとした時、くん、と髪が引っ張られる感触がした。
「いたっ」
「すまん、絡まってしまった」
先生のシャツのボタンに引っかかったようで大きな手が私の黒い髪を掴んで慎重にボタンから外そうとしてくれる。
前世と同じように伸ばした長い髪をまた煉獄先生が触れていることに涙がじわりと滲む。

「切っちゃってもいいですよ…」
「駄目だ、綺麗な髪なのに」

先生は目線を下げたままゆっくりと髪を解いていく。至近距離でも合わされることのない視線を少し寂しく思いながら普段見えない旋毛や鼻梁、目の窪みをじっと見つめる。

「あのな、名字はいつもいつも俺のことを見過ぎだぞ」
「…似ているんです。昔好きだった人に。
また会おうと言ってくれたのに二度と会えなくなったんです。私の事忘れちゃったのかなぁ…もう思い出してもくれないみたい」
「ひどい男だな、それは」
「本当ですよ。本当に…ひどい人」

いつのまにか髪はとっくにボタンから解けていたようだけれど先生は指先で黒髪を巻きつけるように弄っていた。

「すまない」
「何がですか…さっきの恋愛対象かどうかの話?」
「いや、俺に似た男が名字を傷つけて、もう二度と会えないというのなら代わりに俺が謝ろう。
気は晴れないかもしれないがいつまでも待つのは辛いだろう?」

ついと先生の琥珀の目と視線が合う。
揶揄いや同情ではない穏やかな目線をじっとこちらに向けられると堪らなくなって先生の指に視線を落とす。
「…本当に悪いと思ってる?すごい悲しかったんだよ?
忘れないでいて欲しかったよ」
言葉にしながらぽたりぽたりと目から溢れた涙が床に丸い染みを作る。
「悪かった」
先生は半分も理由を分かってないくせに、自分じゃない男のために生徒の私に謝ってくれている。真摯な声が胸にすとんと落ちてきて心の中の柔いところに染み込んでゆく。

「仕方がないから、許してあげる」

泣きながら無理やり笑って煉獄先生を見ると、困ったように眉を下げて笑い返してくれた。
指先で涙を拭ってすんと鼻を啜る間も先生の琥珀の目がずっと私を見ているので、恥ずかしくなってきて目線を外に逸らす。
「少しは毎日熱い視線を向けられる俺の気持ちも分かってくれたか?
2学期からはもう少し授業を聞いてくれるとありがたいな!」
「…はい」
「もう一つ、俺は昔から髪の長い女性が好きだ。
俺が君に変な気を起こしてクビになるのは嫌だと思ってくれるのなら、こういう気を持たせるような事は俺の生徒でいるうちは止めるように」
分かったか、という煉獄先生にびっくりして瞬いていると、大きな手が子猫でも触るような手つきで頭を撫でて溢れた長い髪を一束耳に掛ける。
「柔らかい髪だな。さっきみたいに引っ掛けないようにな」

さぁ終わりだ、と窓を閉めだした煉獄先生は記憶の中の『煉獄杏寿郎』とはやはりどこか違う顔をしていた。それでも私はやっぱり彼のことが大好きだ。前世の恋人じゃなくても、きっと私は彼を好きになっていた。そう確信する。

「卒業したらデートしてくれるってことですか?」
「その発言だけでもクビが近づくから止めてくれ…」

心底困った顔をした煉獄先生は、私がどれだけ好きか分かっていないからこれからじっくり教えてあげなくちゃいけない。十年分、ううん、前世も含めたらもっと長い間貴方を好きなのよって。


執筆:ふふ様 / テーマ:許し
素敵なお話をありがとうございました
(20/05/16 掲出)



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